研究課題/領域番号 |
26380708
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
井川 充雄 立教大学, 社会学部, 教授 (00283333)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ラジオ / アメリカ / 放送 |
研究実績の概要 |
平成26 年度は、本研究プロジェクトの初年度として、先行研究のレビューをしながら、日本国内およびアメリカにおける資料調査を行った。日本国内では新聞や雑誌、書籍に掲載された記事等の収集を行った。また、アメリカにおいては国立公文書館、議会図書館等で、USIAやAFNの活動に関するさまざまな資料の閲覧・複写を行ったが、その中にはオーディエンスに対する調査結果も多数保存されていることを確認した。 日本では、大正期以降、ラジオに関係する雑誌がいくつか存在するが、敗戦後、さまざまな出版物が堰を切ったように刊行された。これらラジオ関係の雑誌は、最初は中波放送を聞くための受信機の製作からスタートしたが、すぐにその関心は短波無線の送受信にも向けられていった。また、図書でも、中学生ぐらいを対象としたラジオの入門書が存在する。それらが啓蒙的な役割を果たしたのである。さらに、1950年代に入ると、電波や電器に関する技術系の雑誌から情報を得て、みずからラジオ受信機やアンテナを製作する「短波マニア」が登場する。そして自分たちのクラブを結成して情報交換を行う様になるのであるが、アメリカ側の資料にもそうしたクラブの存在が記載されている。 こうした動きは、大正期の「アマチュアラジオ文化」の再来とも言える。つまり、ラジオの原理や海外からの放送の受信方法を雑誌や書籍、あるいはサークル等から入手し、自作のラジオやアンテナで海外からの電波を受信しようとするものである。ただ、彼らはあくまで、理系の才があってメカに強い人びとであり、男子に偏っていた。そのため放送の送り手が想定していたような国民全般を網羅するものではなかった点は注目に値する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、日本側でのアメリカのラジオについての聴取記録の発掘を行うこととしている。日本の新聞や雑誌に掲載された記事についての収集は十分行っている。 また、アメリカにおける資料調査については、アメリカの国立公文書館、議会図書館等の所蔵資料は多量であるため、今後も継続的に閲覧・複写を行う。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の研究対象であるVOA(Voice of America)と米軍放送FEN(Far East Network)の由来を解明するために、第二次世界大戦期のプロパガンダ放送にも焦点を当てる。そのため、日本や欧米各国における国際放送の発展、日本における「ラジオ文化」の盛衰についても注目する。 日本国内では引き続き、国会図書館に所蔵されている資料を分析するとともに、沖縄県公文書館等の他の機関に所蔵されている資料の発掘を進める。また、個人でもアメリカのラジオを聴取した記録が日記、回想、回顧録等に散在しており、それらを丹念に収集していく。 他方、アメリカおよび台湾においても資料調査を行う。アメリカでは国立公文書館、議会図書館等に所蔵されているUSIAやAFNの活動に関する資料の分析を進めるともに音声資料の発掘も進める。台湾においては、国立台湾図書館、国立台湾大学図書館等において、日本占領期の「東亜放送」の実態の解明を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度は、研究の初年度に当たり、各種資料の収集等を重点的に行ったが、とりわけ国内での調査を優先させたため、当初の予定よりも旅費の支出が少なくなった。また、音声資料のテキスト化、データベース化のための人件費・謝金も計上していたが、平成26年度はそこまで至らなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度においては、海外での調査を継続する。アメリカ、台湾等への出張を行うほか、収集したデータ等についてテキスト化、データベース化の作業を行う。
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