研究課題/領域番号 |
26380708
|
研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
井川 充雄 立教大学, 社会学部, 教授 (00283333)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | ラジオ / アメリカ / 放送 |
研究実績の概要 |
前年度に引き続いて、平成28年度は、日本国内およびアメリカにおける資料調査を行った。日本国内では新聞や雑誌、書籍に掲載された記事等の収集を行った。また、アメリカにおいては国立公文書館、議会図書館等で、USIAやAFNの活動に関するさまざまな資料の閲覧・複写を行った。とくに公文書館(NARA)に、AFNに関する膨大な資料群があることがわかり、閲覧・複写の上、分析・考察を進めた。 米軍放送の起源は、1942年5月26日に当時のアメリカ陸軍省が、アラスカ駐留の兵士のために軍隊内のラジオ局として、Armed Forces Radio Service(AFRS)を設立したことにさかのぼることができる。第二次世界大戦によりアメリカ軍が世界各地に展開するようになると、そのラジオ・ネットワークであるAmerican Forces Network(AFN)も活動範囲を世界に拡大した。第二次世界大戦終結後も、冷戦構造が固定化したことが、AFNを存続させる結果となった。朝鮮戦争期からはラジオ放送に加え、テレビ放送も行われるようになってきたが、1954年4月24日、AFRSは、Armed Forces Radio and Television Service(AFRTS)と正式に改称されている。 AFNの番組はあくまでアメリカ軍基地に勤務するアメリカ兵やその関係者に向けてニュースを伝えたり、娯楽を提供したりするためのものである。しかし、電波というメディアの特性上、その範囲は米軍基地の境界を越えて、その周辺の地域住民にも聴取され、本来のリスナーとして想定しているアメリカ兵やその関係者以外に多数のリスナーが存在しているのである。アメリカ政府の公式の広報機関であるUSIAと相まって、AFNは戦後の「アメリカニゼーション」の一翼を担ってきたのである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、VOAやFENなどアメリカのラジオ聴取記録の発掘と行うことにしており、日本国内の資料収集はおおむね順調に進んでいる。アメリカにおける資料調査については、継続的に行っているが、分析・考察が不十分である。様々な資料を駆使して、立体的に分析・考察を行う必要がある。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究の研究対象であるVOA(Voice of America)と米軍放送放送FEN(Far East Network)については、「広報外交」の視点からも両者の考察・分析を進める。またそれらの前史となる第二次世界大戦期におけるプロパガンダ放送や日本や欧米各国における国際放送の発展にも焦点を当て、とくに日本統治時代の台湾放送協会や日本による「東亜放送」の実態解明にも努める。 上記のため、日本国内では、国立国会図書館、公文書館、沖縄県公文書館等の所蔵資料を閲覧し、考察分析を行う。 また、海外においてもアメリカの国立公文書館、議会図書館等に所蔵されている放送の記録や録音等の発掘を進めるとともに、台湾においても国立台湾図書館、国立台湾大学図書館、中央研究院での資料収集を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究初年度の平成26年度において、国内調査を優先させたため、当初の計画よりも旅費の支出が少なくなった。またテキスト化やデータベース化のための人件費や謝金も計上していたが、使用に至らなかった。平成27年度においては、ほぼ計画通りに予算を執行した。平成28年度においては沖縄等での国内調査を計画していたが、実施に至らなかった。こうした経緯から、残額が発生した。
|
次年度使用額の使用計画 |
平成29年度においては、日本国内および海外での調査を継続して行うとともに、研究成果の発表を行う。アメリカ、台湾等への出張を行うほか、収集した資料の整理や分析のための謝金、データベース化等の作業を行う。
|