研究課題/領域番号 |
26380709
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
鈴木 弥生 立教大学, コミュニティ福祉学部, 教授 (80289751)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | グローバリゼーション / 国際労働移動 / バングラデシュ / アメリカ合衆国 / ニューヨーク市 / 女性労働者 / 移民労働者 / 移住 |
研究実績の概要 |
2014年にアメリカ合衆国の永住権を獲得したバングラデシュ出身者の総数は1万4645人である(United States, Department of Homeland Security[2016]2014 Yearbook of Immigration Statistics)。そのうち、約半数がニューヨーク州に集中している(Official website of the Department of Homeland Security)。 調査の範囲内ではあるが、バングラデシュ出身者がニューヨーク市に移動もしくは移住した理由は、労働需要が他都市と比較して大きいということである。また、女性労働者たちは、先にニューヨーク市に移住した親戚や兄弟を頼って単独で移動したのち、バングラデシュ出身者による紹介を通して雇用機会を得ている。職業は、チェーン店店員、パブのプラカード持ち兼店内雑用、地下鉄キオスクの家族経営者等で、雇用形態は非正規雇用や時間労働に限定されている。学歴は相対的に高いが、留学するような資金はなかったと回答している。 家族構成員の幸せが自らの幸せであると断言する女性たちは、実子や年齢の離れた姉妹兄弟の将来を思い描いて、当初から、彼女・彼らを呼び寄せることを計画している。そこには、バングラデシュ政治経済の不安定、雇用機会の不足、世界的にみると相対的に低い賃金水準といった背景がある。 アメリカ合衆国の移民政策は単独よりも家族での移動を優先しているが、この方針はバングラデシュ出身者には受入れやすいものであると言えよう。しかし、不動産を始めとしてすべてが高騰しているニューヨークでは、生活を維持するために長時間労働を余儀なくされている非正規雇用の移民労働者が多くみられる。なかには、呼び寄せられた家族構成員が収入を得るために順次労働に出されているといった例もみられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2016年11月、ニューヨーク市に滞在して、国際労働移動(移住)の研究者であり、Dubai Gilded Cage[2010]Yale University,および Hartmann Douglasとの共著 Migration, Incorporation, and Change in an Interconnected World[2015]Routledgeの著者であるロングアイランド大学助教授・アリ氏を訪問して、ドバイやアメリカ合衆国における移民労働者の現状についての聞取りおよび今後の研究についての打合せを行った。 また、バングラデシュ出身者を中心とする移民労働者からの聞取り調査を継続している。
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今後の研究の推進方策 |
2017年度サバティカル期間の海外研究が承認され、2018年3月までコロンビア大学の客員研究員としてニューヨーク市に滞在する。そのため、2017年4月より、資料収集、Amartya Sen and Akeel Bilgra, Society at a Crossroad([2017年4月28日]於、RUBIN Museum of Art)等各研究会参加、移民労働者の参与観察、バングラデシュをはじめとする移民労働者からの聞取り調査等を継続している。バングラデシュ出身者が形成しているコミュニティでの調査も予定している。 バングラデシュ出身の女性労働者の多くは、男性が移動もしくは移住した国・地域に女性も移動・移住するといった傾向がみられることから、女性に限定せず、男性からの聞取り調査をも継続する。また、可能であれば、ニューヨーク市以外の地域においても調査を行う。これまでの研究成果については、適宜、学会誌や学部紀要に投稿する。 そのほか、交付申請書でも述べたように「国際労働移動は二国間の孤立した現象ではなく、グローバルな流れの一環として位置づけられる」(森田桐朗編著『国際労働移動と外国人労働者』同文舘、1994年、25頁)という指摘から、可能であれば、アメリカ合衆国におけるバングラデシュ出身者以外の移民労働者の調査のほか、アメリカ合衆国への移住が多くみられる各近隣諸国においても調査を行う。ただし、ビザ等の問題に注意する必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
夏期に国際NGO事務所で不覚にも右手首を骨折してしまったことから、夏期休暇中の調査を延期した。その後、まとまった日程を確保しにくかったことから、調査日程を縮小したことによる。
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次年度使用額の使用計画 |
現地調査に伴い必要となる宿泊費と日当に使用予定。 文献購入予定。
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