トランスナショナリズムと社会的結束についての文献を整理した。これは調査よる実証研究と合わせて執筆中である。また、国際会議等で研究期間中に成果発表も行った。 フィールド調査としては、エスニック・ビジネスの展開について聞き取りを実施した。池袋地区では、飲食店のオーナーなど日本でのビジネスを行っている中国出身の人々が集まるイベントである東京国際交流新年会や春節祭に参加、日中交流協会のイベントにも参加して、情報収集をした。中国関係のビジネスの集まりには、それ以外の地元商店街などからも出席者はいるが、現時点ではそれほど多くはない。緩やかなつながりが存在しているが、協働形態のような形では進展は顕著ではない。しかしながら、地元のイベントへのエスニック・コミュニティからの参加もあり、いくつかの双方のアプローチは認められる。 日中間で往来するトランスナショナルなアクターに対する聞き取り調査も行った。これにおいて日中間の関係が仕事に影響してきたことなどがわかった。 池袋地区と大久保地区では、送金会社などの支店が近年増加してきたが、それ以外のネットワークを通しての形態の送金システムが現れてきたことがわかった。とくにビットコインや、ネットバンキング関連の送金システムが進歩して、この領域ではトランスナショナルなネットワークの構築が目覚ましく進んできている。 トランスナショナルな回路やエスニック社会とローカル・コミュニティの協働に関する研究は、さらに実証的なデータの蓄積が必要である。また、双方のアプローチの進展次第では、地域の活性化に結びつく可能性もあり、今後研究の余地がある。
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