研究課題/領域番号 |
26380715
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研究機関 | 恵泉女学園大学 |
研究代表者 |
定松 文 恵泉女学園大学, 人間社会学部, 教授 (40282892)
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研究分担者 |
小森 宏美 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (50353454)
中力 えり 和光大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (50386520)
佐野 直子 名古屋市立大学, 人文社会系研究科, 准教授 (30326160)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 地域研究 / ヨーロッパ / 文化比較研究 / 文化の政治化 / 空間論 / 辺境 / 国際社会学 / バウンダリー・コンフリクト |
研究実績の概要 |
当初の計画通り2回の研究会と1回の現地調査を行った。 第一回目の研究会では3年間の研究課題と目的について認識を共有した。第二回目の研究会では、研究課題である「文化の政治が表象する社会空間」の概念の先行研究の一つとしてSaskia Sassen,2006, Territory, Authority, Rights: From Medieval to Global Assemblages, Princeton University Press(=2011,『領土・権威・諸権利――グロ-バリゼ-ション・スタディ-ズの現在』伊藤茂訳,明石書店)を各章分担し、研究協力者を含めた7人で検討した。領土は権威によって確定し、現在進行中のグローバリゼーションは実は富を蓄積した国家と企業の脱ナショナル化過程であることが指摘されている。歴史学的には粗い分析ではあるが、調査における権威と権利の交渉過程について示唆に富むものと確認された。 現地調査は平成27年2月10日から16日にモルドヴァ・キシナウ、ルーマニア・ヤシとブカレストにおいて、中島崇文氏のコーディネートで定松文、小森宏美、佐野直子、中力えりで遂行した。得られた知見は以下のとおり。①19世紀から20世紀初頭のルーマニア国家建設において、歴史的には民族や文化の多様と混成を内実としながら、ハンガリー、ロシア、トルコ、スラブとの差異化を図る対外関係から、ローマ字表記選択、ローマ起源への依拠、フランスへの政治的権威づけ国民国家形成の手法の参照が選択されたこと。②モルドヴァの歴史的な民族多様性、人工的国家建設の経緯、ヨーロッパとロシアの狭間の地政学リスクによる1つの政治的選択を行うことの難しさ。③ルーマニア、モルドヴァの言語と国民の海外流出という共通性の一方で、ルーマニアのEU加盟とモルドヴァに対するロシアの貿易制裁が経済格差となっていること。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、研究会の実施、EU内とEU域外の境界を形成する文化の政治についてモルドヴァを中心に現地調査を含めた検証ができている。その知見についてはまだ論文等にできていないが、それを平成27年度の課題としたい。
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今後の研究の推進方策 |
研究会は5月31日に研究分担者の昨年度の調査による知見のまとめと当該年度の調査計画を決め、新たな理論的文献の先行研究を行う。8月あるいは9月は実証的研究の他の事例として、海に面したヨーロッパの辺境(ガリシア、マルタ、ポルトガルなど)の地域研究の知識提供を外部に依頼し、これまでに得た知見との整合性を確かめる。 現地調査は平成26年度の調査対象地域とは異なる地域において行う(エストニアあるいはポルトガル)。調査地の選定は海外危機管理情報を精査したうえで行う。モルドヴァにおけるロシアとの関係とエストニアにおけるロシアとの関係の違い、海を隔て経済的にモロッコや南米市場を意識しつつどのような空間的実践よって差異化を行っているのか、それはEUの統合過程でどのような変節を経てきたのか。最前線ではどのような文化の政治が行われているのか現地調査し、検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2月の調査の現地調査において、燃料サーチャージ等を含めた旅費が比較的安価に抑えられたことで予算よりも少ない支出となった。
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次年度使用額の使用計画 |
27年度はポルトガルを現地調査地とするならば、旅費が高くなるためその費用にしたい。また、研究会に山口から知識提供者を招くため、その旅費に使用することも考えている。
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