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2016 年度 実施状況報告書

アメリカ型多文化主義の成立と展開をめぐる歴史社会学的研究

研究課題

研究課題/領域番号 26380720
研究機関立命館大学

研究代表者

南川 文里  立命館大学, 国際関係学部, 教授 (60398427)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2018-03-31
キーワード多文化主義 / 人種 / エスニシティ / 多文化教育 / 多文化共生 / 人種主義 / 排外主義
研究実績の概要

平成28年度は、27年度に収集した資料の分析と研究報告および研究論文としての成果発表を行った。まず、アメリカ型多文化主義をめぐる理論的枠組の形成と新しい多元的統合理念の登場を概説した著書『アメリカ多文化社会論:「多からなる一」の系譜と現在』(法律文化社、2016年)の内容を踏まえて、アメリカ型多文化主義の全体像を描いたうえで、その成立に至る制度的条件の形成を中心に分析を進めた。その成果の一つは、アメリカ型多文化主義における人種エスニック分類の公式化の過程を、1977年の連邦行政管理予算局(OMB)の指令15号の成立と展開過程を中心に分析し、査読付き論文として『アメリカ史研究』第45号(2017年8月発行予定)に投稿した。また、1990年代におけるニューヨーク州の社会科教育プログラムにおける多文化主義の導入について、2017年度内の発表と論文化を想定して、スタンフォード大学フーバー研究所およびカリフォルニア大学バークレー校エスニック・スタディーズ図書館において資料収集を行い、その資料分析を進めた。その他、本研究から時事的に派生した課題として、2016年大統領選挙におけるドナルド・トランプ候補の当選とアメリカ国内における反多文化主義的風潮の拡大をふまえ、人種主義、排外主義、ポピュリズム、反グローバル化といった観点から多文化社会としてのアメリカの現状分析を行う論説・報告・解説を行った。また、研究成果の国際発信として、英語での論文発表のほか、米国での研究報告を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

前年度に設定した計画をふまえて、(1)1970年代における多文化主義の制度的基盤の形成、(2)1980年代から90年代における多文化主義の導入と反多文化主義、(3)多文化主義をめぐる概念整理と新たな社会理論化、の3点を中心に進め、その観点からの現代アメリカ社会に関わる社会学的分析を進めた。(1)については、1970年代のアメリカ連邦政府における人種エスニシティの公式化をテーマにした論文を執筆した。同論文では、連邦政府内で人種とエスニシティをめぐる定義が標準化され、5つの集団で構成されるアメリカ社会という見方が確立する過程とそのなかでの人種政治のあり方を議論した。(2)については、1980年代から90年代の多文化教育論争をめぐって調査と資料収集をほぼ完了し、17年度内の論文化に向けて資料分析を始めた。(3)については、日系人コミュニティ、移民政策、ポピュリズムなどの連動するテーマについて、本研究の成果をふまえて論説やメディア解説などを行った。また、研究成果の国際発信として、米国ワシントンDCで日米研究インスティテュート主催のセミナーで研究報告し、米国の研究者や専門家と意見交換を行った。

今後の研究の推進方策

最終年度に当たる平成29年度は、1980年代から90年代にかけての多文化主義の導入過程を中心に研究を進めたうえで、これまでの理論研究および1970年代までの多文化主義的政策枠組の形成過程と総合して、アメリカ型多文化主義の導入と展開の全体像を、歴史社会学的な観点から明らかにする。まず、1990年代初期までのニューヨーク州における多文化教育の導入を事例として、「多文化主義」の語がアメリカ社会に本格的に導入され、その社会像をめぐる論争が広がる過程を分析し、その成果を学会報告および学術論文として発表する。その後、研究書としての発表を念頭に、アメリカ型多文化主義の形成と展開についての全体像を描く。また、社会的要請の大きい、米国新政権と排外主義の展開についても、本研究の視点から積極的に発言・発信する。さらに、国際的な成果発信として、平成30年度内における国際学会での報告(国際社会学会の世界社会学会議を予定)に向けて準備を進める。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2017 2016 その他

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (2件) 図書 (5件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] エスニック・コミュニティ史における主体性と構造:多人種と越境者のリトルトーキョー2016

    • 著者名/発表者名
      南川文里
    • 雑誌名

      史潮

      巻: 79 ページ: 28-50

  • [学会発表] アメリカ合衆国の排外主義と国境管理:ネイティヴィズムの歴史的展開に注目して2017

    • 著者名/発表者名
      南川文里
    • 学会等名
      国家論研究会
    • 発表場所
      法政大学(東京都千代田区)
    • 年月日
      2017-03-12 – 2017-03-12
  • [学会発表] Anti-multiculturalist Political Culture and Anti-globalism in Japan and the United States2017

    • 著者名/発表者名
      Fuminori Minamikawa
    • 学会等名
      USJI Week, US-Japan Research Institute
    • 発表場所
      USJI Office ワシントンDC(米国)
    • 年月日
      2017-03-02 – 2017-03-02
  • [図書] 「ヘイト」の時代のアメリカ史:人種・民族・国籍を考える2017

    • 著者名/発表者名
      兼子歩・貴堂嘉之編、坂下史子、石山徳子、土田映子、大森一樹、森川美生、南川文里、南修平、藤永康政、梅崎透、和泉真澄、佐原彩子
    • 総ページ数
      297 (143-162)
    • 出版者
      彩流社
  • [図書] ポピュリズムのグローバル化を問う:揺らぐ民主主義のゆくえ2017

    • 著者名/発表者名
      中谷義和・川村仁子・高橋進・松下洌編、山下範久、國廣敏文、松尾秀哉、渡辺博明、南川文里、溝口修平、山根健至、井澤友美、鈴木規夫
    • 総ページ数
      265 (139-156)
    • 出版者
      法律文化社
  • [図書] マルチ・エスニック・ジャパニーズ:○○系日本人の変革力2016

    • 著者名/発表者名
      駒井洋監修・佐々木てる編著、南川文里、佐藤成基、石井由香、川上郁雄、小林真生、李洙任、陳天璽、倉石一郎、高畑幸、梶村実紀、倉田有佳、南誠、中山大将
    • 総ページ数
      247(26-41)
    • 出版者
      明石書店
  • [図書] Trans-pacific Japanese American Studies: Conversations on Race and Racializations2016

    • 著者名/発表者名
      Yasuko Takezawa and Gary Y. Okihiro ed., Michael Omi, Yuko Konno, Fuminori Minamikawa, Andrea Geiger, Yuko Matsumoto, Valerie J. Matsumoto, Wesley Ueunten, Sachiko Kawakami, Eiichiro Azuma, Rika Nakamura, Masumi Izumi, Mari Matsuda, Noriko K. Ishii, Lon Kurashige, Okiyoshi Takeda, Yoko Tsukuba, Duncan Rycken Williams
    • 総ページ数
      456 (107-132)
    • 出版者
      University of Hawai'i Press
  • [図書] グローバル・サウスとは何か2016

    • 著者名/発表者名
      松下洌・藤田憲編、竹内幸雄、藤本博、長島怜央、秋林こずえ、道上真有、南川文里、中根智子、岡野内正、渡辺直子、石原直紀、伊藤カンナ、中野洋一、田巻松雄、カルロス・デ・クエト・ノゲラス、太田和宏、川村仁子、杉浦功一
    • 総ページ数
      352 (145-164)
    • 出版者
      ミネルヴァ書房
  • [備考] 「移民の国」アメリカの経験から、日本型の多文化社会を展望する。

    • URL

      http://www.ritsumei.ac.jp/research/radiant/aging-society/story8.html/

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公開日: 2018-01-16  

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