研究実績の概要 |
本研究の目的は,企業組織における日系人を中心とした外国人労働者の社会的包摂とエンパワメント(自律・活性化)を促進するキャリア制度の形成過程とそれを動力とした企業組織と地域社会の成長と活性化の関係性について明らかにすることにある。特に、彼らの文化的差異と潜在能力を活用した産業・企業、さらには地域社会の活性化に関して調査と研究を進めてきている。こうした問題意識のもとに、過去三年間に、個別具体的な質的データ(日系人雇用企業等の人事・キャリア施策および被雇用者の就労・生活実態・キャリアパスなど)および量的データ(外国人労働者・日系人の流出入,定住地域,出身国,就労状況等)の収集・検討・整理(Arakawa, et. al, 2015)を行ったうえで,1)日系外国人のキャリア形成モデル,2)日系人を雇用する企業による組織社会化・キャリアデザイン要素の抽出(Arakawa, et. al, 2016)を行った。平成28年度は、東海、関西地域の企業へのフィールドワークに基づく質的データを整理し、日系ブラジル人を多く雇用する製造請負・派遣事業の大手2社に注目し、その協力のもと、質的・量的調査を実施した。前者は、関西の大手派遣事業者に加え、東海地域の大手事業者のインタビューを繰り返し、経営層から現場労働者まで幅広く実施した。こうした質的データの企業間での比較検討を行うことで、事業者ごとの企業戦略・企業文化に基づく人事政策と派遣労働者の組織社会化やキャリア形成に差異が生じていることを発見し、仮説企業モデルとして提出した。また、平成27年度に提出した「キャリアパス・モデル」のうち、日系人の個別特性とキャリア形成および社会化要素との相関に関して日系人管理職約160名を対象とするアンケート調査を実施し、日本への定住意思と組織社会化、就労特性の関係を明確化している。
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