研究課題/領域番号 |
26380724
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研究機関 | 桃山学院大学 |
研究代表者 |
石田 あゆう 桃山学院大学, 社会学部, 准教授 (70411296)
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研究分担者 |
村瀬 敬子 佛教大学, 社会学部, 准教授 (20312134)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ラジオ / 雑誌 / メディア / 女性 / ネットワーク / 家庭 / 生活 / 栄養 |
研究実績の概要 |
2014年度は、2か月に1度の割合で定期的に研究会を開催しながら、1950年代以後のメディア教育の下地を形成した婦人雑誌愛読者による講習会や、ラジオの料理番組の家政教育としての可能性についての検討を行った。 まず雑誌メディアを通じた家政や家庭科教育の普及について考察した。婦人雑誌『主婦之友』では、太平洋戦争末期の家政や生活に関する講習会が読者支援のために行われたが、それが戦後の雑誌存続をあと押しした。もともと主婦之友社には、読者との関係性を密なものとするために文化事業部が存在した。こうした組織を核として、戦時期の読者の生活支援として毎月のように実施されたのが「生活必需品の防護展覧会」や「洋裁講習会」、「防寒物の工夫展覧会」などである。「読者のため」の雑誌作りをモットーとした同社社長の石川武美が実施した読者への懸賞サービスや文化事業の宣伝効果は、『主婦之友』が危機的状況のなかで威力を発揮し、そのたびに読者の「信頼」を裏切ることなく、愛読者ネットワークを形成する契機となった。「雑誌と読者の絆」の育成は、同時代の生活教育という点からも、現代の公共圏のあり方を検討する上でも注目に値すると考えられる。また、1970年代の「若い女性」向けのメディアがファッション雑誌でありながら、結婚生活を前提としない趣味的な実用情報(クッキングやお弁当、お菓子作りからインテリアなど)を掲載し、実質的な家庭科教育としての機能を担っていたことへの検討も行った。 一方、現在のテレビにおける料理番組の人気は、戦前からつづくラジオの料理番組へさかのぼることが出来る。番組では多様な「家庭料理」が紹介され、主婦には日々異なる献立を作ることがすすめられる。さらに栄養に関する知識の普及がラジオを通じて図られ、戦時体制下にあっては家庭生活の維持に必要な主婦の教養ともなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
とくに大きな問題はなく、おおむね順調に実施している。 ただ研究遂行者のこれまでの研究と連続性を持たせるため、まず取り組むべき研究対象を、学校教育ではなく、マスメディアの教育的機能の考察を優先することにした。
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今後の研究の推進方策 |
消費社会が進展し、女性の専業主婦化がすすむ時代にあって、家庭的な知識を獲得する場が、学校公教育から市場に移動し、メディア教育と結びついていく過程を考察する。 日本における理想化された家庭イメージがメディアを通じて流布するとともに、その実践を獲得するために通信教育、ないしメディア教育が機能したと思われる。このテーマを軸に、日本において展開された女性向けに商品化された通信教育の特徴について明らかにする。 具体的には「家庭科」をめぐって展開される学校教育と通信教育のジェンダーポリティクスについて検討し、学校家庭科教育と、ジェンダーに基づいて女性消費者を魅了する講座商品開発に余念のない通信教育関連企業とのせめぎあいについて、2015年度は検討していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
個人的な事情で予定していた出張ができなかったため、旅費の支出が当初の予定よりも少なくなった。また、当初予定していた聞き取り調査が実施できなかったため、想定していた謝金の支出が少なくなっている。
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次年度使用額の使用計画 |
資料収集のための出張と物品購入、およびインタビュー協力者への謝金として支出する予定である。
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