研究課題/領域番号 |
26380725
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研究機関 | 大阪経済法科大学 |
研究代表者 |
武田 里子 大阪経済法科大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (30570410)
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研究分担者 |
宣 元錫 大阪経済法科大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (10466906)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 結婚移住者 / 多文化家族 / 編入モード / ライフコース / 家族変容 / 圧縮近代 |
研究実績の概要 |
結婚移住と家族形成に関する日本と韓国の比較研究を目的とする本プロジェクトは、当初、共通する結婚移住者としてフィリピン女性を想定していた。しかし調査を通じて、台湾と韓国で暮らす日本人結婚移住者の自助組織とつながりを持つことになり、参照点を日本人女性に変更した。これには2つの利点がある。ひとつは、考察期間を80年代に広げることができること。もうひとつは、比較対象国に台湾を加えることによって東アジア3カ国に広げることができる。 昨年度は、台湾の日本人結婚移住者の協力を得て第二世代の日本留学に関する質問紙調査を実施し、基礎データ(結婚経路、世帯収入、言語習得状況、子どもの日本語・日本文化継承、日本の親族との関係など)を得た。この調査論考を通じて韓国と日本で暮らす日本人結婚移住者とも調査協力関係を築くことができ、研究体制を整えることができた。 政策面では、済州島で政府の多文化家族支援事業で運営されている「多文化家族支援センター」と多文化家族当事者の互助組織である「多文化家庭支援センター」の訪問調査を実施した。本調査から、政府が実施している多文化家族支援事業が結婚移住者と多文化家族を支援が必要な「かわいそうな」、または支援しなければならない人々というような「ラべリング効果」を生んでいる、という課題が浮かび上がってきた。トップダウン式の事業には、事業の主体と客体の線引きを通じて、多文化家族の「対象化」や「他者化」がもたらされる側面がある。政策が、実施過程で本来の主旨とは異なる予期せぬマイナス効果を生み出してしまう要因のひとつは、当事者の関与のあり方ではないかと思われる。この点について次年度に追加調査を行なう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
家族変容を捉える参照点をフィリピン女性から日本人女性に変更することになったが、当初計画よりも、考察期間をグローバル化が本格化する以前に設定することができるようになり、また、日本と韓国に加え台湾も含めた調査体制が整い、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
本プロジェクトは次年度が最終年度となる。9月末までに日本人結婚移住者と済州島での追加調査を行ない、12月の移民政策学会で報告し、そこでの議論を踏まえて報告書をまとめる。 なお、報告書には、本プロジェクトを通じて形成されつつある、日本、韓国、台湾で暮らす日本人結婚移住者にも寄稿を依頼する。台湾では日本政府が台湾を国家として承認していないため、日本人結婚移住者は実質的に重国籍を保持することができ、韓国では2010年の国籍法改正により重国籍が条件付きながら容認された。しかしながら、日本の国籍法は国籍選択制度を定めているため、日本人結婚移住者とその子どもたちも法制度の矛盾に直面してしまう。グローバル化時代の家族と法制度はどのようにあるべきなのか。この点が当事者と議論を深める主要な課題になる。各国のキーパーソンとは里帰り帰国の機会を使って研究会を開催する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
予算の執行残が発生した主な理由は2点ある。ひとつは、台湾で実施した質問紙調査費が大幅に圧縮できたためである。台湾の日本人結婚移住者組織から調査票の印刷を現地で発注してもらい、また、調査票の配布と回収を無償で引き受けてもらったことが大きい。もうひとつは、外部委託する予定であった調査票のデータ入力を研究代表者が行ない、謝金の支払いが発生しなかったことによる。
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次年度使用額の使用計画 |
未使用額については、次年度に実施する追加調査旅費と韓国・台湾の関係資料の翻訳謝金に充当する予定である。
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