研究課題/領域番号 |
26380727
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研究機関 | 大阪経済法科大学 |
研究代表者 |
橋本 みゆき 大阪経済法科大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (60725191)
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研究分担者 |
猿橋 順子 青山学院大学, 国際政治経済学部, 教授 (10407695)
柳 蓮淑 大阪経済法科大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (20725197)
高 正子 神戸大学, 国際文化学部, 非常勤講師 (80441418)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 在日コリアン / 世代 / 生活文化 / 継承 |
研究実績の概要 |
助成3年目であった2016年度は、調査データに基づく考察と研究成果発表に取り組んだ。成果の共同まとめ作業には相当の時間がかかると見込まれることから、年度開始前後の検討会議において執行期間を1年延長する方針を立て、慌てずに進めることができた。 具体的活動としては、(1)各研究分担者それぞれが所属学会等で口頭発表したり、それを文章化して学会誌に投稿したりした。(2)これまでのインタビュー事例を個々の記録冊子にまとめる作業を分担して進め、協力者本人への提示及び再インタビューを順次始めた。(3)調査データを博物館展示資料として加工し、広く一般に情報発信する構想を持っていたが、それが十分にできるだけの時間と協力者と機会を確保するのは難しいことが分かってきた。そこで(3)は断念し、(1)(2)に注力してきた。 内容面では、少しずつだが着実に知見を蓄積しつつある。例えば、家族儀礼としての祖先祭祀の柔軟な実践、事例横断的にみた在日2世女性のジェンダー類型、家族役割と生活文化の語りに現れる2世アイデンティティ、「世代」概念の再検討など、本研究課題から生起したさまざまな視点から実証的・解釈的研究の公表を重ねた。そこで見えてきたのは、儀礼、移住2世女性、民族的家族的アイデンティティ、世代間関係などの、一定の定義やイメージで理解されてきた社会事象が、かなり柔軟に解釈・実践されていたり、幅や含みのある語られ方をしたり、いくつかのタイプ分けが可能であったりして、状況依存的に複雑な現実が生きられている様子である。また、個別に作成した生活文化物語冊子を本人に見せてコメントをいただいた際、最初のインタビューでは見えなかった面が強調されることがあった。ここから、在日1世である親から継承しただけではない、2世が築いた生活や活動の実績に注意を喚起され、本研究が、素朴な「継承」物語には終われないことを痛感した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究開始時に予定していた3年間という目安は過ぎたが、事業実施期間を1年延長したことで、落ち着いて研究に取り組むことができている。初動のインタビュー調査はほぼ終了し、現在、フォローアップ・インタビューをできるところから始めている(初動インタビューの結果、これから追加対象者としたい人物も浮上した)。個々の事例の全体像を文章化し、フィードバックを受けて修正する作業に時間がかかっている。また理論的検討は事例研究と並行して進めているが、研究対象全体を説明する枠組みはまだ十分に提示できていない。4年目には、これまでの成果を集積して1冊にまとめた報告書を作成できるよう、個別の作業と全体を踏まえた焦点化との両輪を回していきたい。
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今後の研究の推進方策 |
4年目は、まずは3年目で終わっていないインタビュー協力者別の事例まとめ作業と、各研究者の学会発表や論文執筆によるアウトプットを続ける。そして、インタビュー事例を集約するとともに研究全体を見渡した論考を収録した1冊にまとめることを目標に進めていく。公刊の可能性は模索中(出版社に相談して現在回答待ち)であるが、これまでインタビュー協力者とその家族向けに作ってきた個別事例記録冊子を、より多くの人に向けて発信できるモノとして、何らかの形にしたい。 在日2世研究に取り組んできて、その置かれた状況の複雑さや個人の解釈・人生経験のダイナミクスに改めて気づいた。これまであまり研究対象とされることなく漠然としたイメージで捉えられるばかりの在日2世であったが、2世研究のおもしろさや重要性を十分伝えられるようにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初構想していた博物館展示資料化が困難になったので、成果還元方法を変更し、フォローアップ調査と研究全体の報告書作成を丁寧に進めることにした。
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次年度使用額の使用計画 |
初動インタビュー調査や関連フィールドワークのための旅費はほぼ執行した。残額は主に、成果をまとめたり発信したりするための費用にあてる。
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