本研究は、高野文化圏の総合的研究をおこなうとともに、その成果を研究者や一般市民に公開すべく準備を進めるものである。特に人や物の移動を中心に進めている。 歴史資料については前年度に引き続き「金剛峯寺諸院家析負輯」のデータ入力をおこなった。データ入力は全体の10分の3程度が終了した。入力ペースは前年度と同じ程度である。橋本市の田中家文書については、橋本市図書館に所蔵された複製版を個人的に調査したにとどまった。高野山大学図書館所蔵の丹生家文書について、翻刻作業を始めた。高野山金剛峯寺が発行する『高野山時報』の目次入力は、戦前の部分の入力がほぼ終了し、校正段階に入っている。密教文化研究所に保管されている山内の歴史資料のリストについては、私立大学研究ブランディング事業が採択されたために、分担を決める必要があるために、作業は中断した。また寒川町文書館に保管された高室院文書のマイクロフィルムのデジタル化については所蔵者から許可が得られていないので、見送った。 フィールド調査については、昨年度同様に商家を中心にインタビュー調査を実施した。インタビュー件数は多く確保できず、アンケートについても住民への理解を得ることがむずかしいために、回収率が期待できない状況であると判断して、今年度は見送った。九度山町の河根地区などで移動の調査、信仰調査を実施した。かつらぎ町天野では納豆を中心とする食文化調査を実施した。高野山周辺の自治体で採用されている地域おこし協力隊の調査も始めた。 社会への発信として、8月に高野文化圏研究会のシンポジウム「高野山とデジタルアーカイブ―これまでと今後の課題―」を開催した。iPad版高野山ナビの構築のための調査とともに、映像撮影もおこなった。また9月と3月には地域おこし協力隊の研修交流会を実施した。
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