2016年度は、当事者への調査を行うことよりも学会報告による研究の精緻化と、特に論文執筆による研究成果の公刊を主として行った年であった。 学会報告としては、「病への“対策”はいかに規定されるのか――HTLV-1対策推進協議会議事録への計量テキスト分析より」(於日本社会分析学会例会)を行った。 論文は、上記学会報告を元にした「病に対する公的対策はいかに決定されるのか――HTLV-1対策推進協議会議事録への計量テキスト分析より」(2017年、『梅光学院大学論集』50号、48頁ー70頁、査読あり)、「病の当事者の共同性/病の当事者と共同性――HTLV-1関連疾患当事者団体の運動に注目して」(2017年、『社会分析』44号、依頼あり、査読なし)の2本を公にした。また、現在医療社会学系学会誌に投稿・査読中の論文が1本、保育学系学会誌投稿予定の論文が1本ある。 本研究によって、HTLV-1関連疾患当事者の生活のありようが、特に当事者団体へのグループインタビューによって明らかにされたと考える。今後は、本研究の中から見えてきた、当事者団体の当事者だからこその運動のあり方――運動戦略や論理、その帰結――に照準し、研究を継続していくこととしたい。論文の形でいくつか研究成果を公にできたことが今年度の成果として挙げられる。特に、研究当初はあまり想定していなかった、保育学の分野において、HTLV-1関連疾患当事者の社会学的研究の成果を示す可能性が見えてきたことは大きい。また、こうしたことに加え、続く研究への道筋を拓けた点も今年度の研究の成果として示すことができよう。
|