研究実績の概要 |
先に提出した延期申請願に説明した通り、2017年度の研究活動は体調上の理由によりかなり規制されたため、学会大会や研究会などでの研究成果報告や国内外への出張を伴うフィールドワークなどの研究活動ができなかった。しかし、研究課題に関する文献研究や論文作成によりこれまでの研究成果の報告を行うなど、可能な範囲の研究活動を行った。具体的には以下の通りである。「日本における離別後の親権と共同養育における課題について一考察」(山西裕美,熊本学園大学付属社会福祉研究所社会福祉研究所報,vol.46,pp.1-19,2018)では、離別後の親権に関して、子どもの権利条約や日本も加盟し発行しているハーグ条約への対応と、2012年改正後の日本の民法下で親権が争われた裁判事例にもみられる「監護の継続性・安定性」を重視する結果として生じる二重の“ダブル・スタンダード”の問題を指摘し、理念や科学知識に対して当事者性を十分に考慮したコミュニケーションと対応の重要性について考察した。また、「離別後の親権についての日韓比較研究」(山西裕美,熊本学園大学付属海外事情研究所海外事情研究,vol.45,pp.1-24,2018)では、前述での分析結果による日本の課題を踏まえた上で、東アジア家族主義福祉国家でも日本と異なりすでに離別後の共同親権が制度上導入促進されている韓国での民法と未成年の子を伴う離婚手続きについて、日本と比較を行った上で、前年度までに韓国で行った現地アンケートやインタビュー調査から得られた離別当事者親子が抱える現状と法制度理念との乖離の問題点について指摘し、韓国の「圧縮的近代」による「圧縮的家族変化」に伴う課題の視点から考察を行った。2018年度は、フィールドワーク調査結果の分析に基づく日韓台の三ヵ国比較研究から東アジア家族主義福祉国家における離別後の共同親権の実施の共通課題と個別の課題について分析を進めていきたい。
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