研究実績の概要 |
本研究は、将来的に居宅で家族に対して介護を提供する可能性のある国内の住民が、在宅介護に対する意識、家族介護に対する報酬をどのように考えているか解明する研究である。最終年度は、研究の解析、公表を行うべくデータの精査と分析作業を行って可能な限り成果の公表の準備に努めた。 家族介護に対する報酬を介護手当と定義した上で、賛否を含めた意向と給付の水準金額を社会調査によって仮想的に同定することを試みた。28年度に実施された調査によって得られたデータを整理することによって、今は介護をしていない住民の考える、家族介護1時間あたりの最低受け入れ意思額を推定した。その結果1,601円と推定された。 一方で住民が家族介護を必要とした際にヘルパーに対する支払い意思額は1,386円、親族が介護した場合に対する支払い意思額は1,401円と推計された。 自分が介護を行った際に高い対価を求めることについては、回答者が新たに介護によって失う時間に対する対価を高く見積もっているからと推測された。その理由として、過去の調査対象の実際の家族介護者は1,000円であったが、すでに行っている家族介護に対する補償の受け入れ価値であること、また高齢者であり相対的に所得が低いことが要因であると推測した。一方で、本調査の回答者は平均45.3歳と生産年齢に位置していることで、現在の所得は高齢者と比べて相対的に高く、仕事や家事のマネジメントに対して、高い補償を求めていることが推定された。つまり、現役世代の求める金額水準で家族介護を評価すれば保険出は増大すると推測された。 よって、所得のある現役世代に対しては、家族介護を実施してもらうよりも、介護保険サービスを積極的に利用し、介護による離職 を防止し仕事を続けて保険料を納付してもらうことが社会的に逸失利益を減らし、持続可能な制度設計としても優れていると考えられた。
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