研究課題/領域番号 |
26380751
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研究機関 | 高知県立大学 |
研究代表者 |
西梅 幸治 高知県立大学, 社会福祉学部, 准教授 (00433392)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 社会福祉関係 |
研究実績の概要 |
平成28年度の研究実績については、まず昨年度に引き続き先行研究の整理・検討を行った。具体的には、1.ソーシャルワーク理論(ジェネラル・ソーシャルワーク、エコシステム視座と構想、エンパワメントなど)、2.各領域におけるソーシャルワークの研究・実践動向(高齢者、地域、障害などの領域で特にエンパワメントに関わる内容)、3.コンピュータ支援ツールに関連する情報科学(支援ツール開発への知識獲得)などについて、幅広く渉猟し、整理・検討を行った。 特に研究目的に即して、わが国での適用が進められているジェネラル・ソーシャルワーク概念の整理と、そこでの利用者自身の力を促進するエンパワメント実践過程の考察が重要であることを把握した。そこでジェネラル・ソーシャルワークの概要と枠組みを整理しながら、利用者の営む固有な生活を捉える視座についての検討を行った。そのなかでは、エコシステム視座が中核的な視座として位置づけられ、その具体化を中範囲概念によって図ることの重要性と支援ツールへの期待が明らかとなった。 そして協働アセスメント方法と支援ツールの開発についても昨年度に引き続き、支援ツールの基礎開発を行っている研究会への継続的な参加により、1.情報科学と支援ツール開発に関する知識の獲得、2.支援ツールに導入する生活支援に関わる情報項目(質問内容)の検討を行った。特に2については、まず一方でジェネラル・ソーシャルワーク導入の必要性が高い地域包括支援センターを起点として取り上げ、そのアセスメント項目の作成についてアセスメント構造と具体的な質問項目を整理・検討した。そこでは前年度までの成果をふまえ、その項目の信頼性と妥当性を検討するために量的調査を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ソーシャルワーク方法論確立のためには、理論的枠組みの構築がまず求められる。そのため海外文献なども検討し時間がかかっているが、おおむね順調に進展していると考えている。しかし支援ツール開発については、基盤となる支援ツールの開発が遅れており、旧盤支援ツールで対応することを検討している。またその支援ツールについては、多領域のアセスメント項目を一度に展開することの困難さがあるため、ジェネラル・ソーシャルワークにおけるエンパワメント実践の具体化が期待される地域包括支援センターでのソーシャルワーク実践に特化して、アセスメント構造や質問項目の分析を進めている。その際に本年度は、量的調査を実施したが、回収率の低さから計画を見直し、再実施をしたため時間がかかっている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策については、引き続き文献をとおして理論的研究を行い、ジェネラル・ソーシャルワークにおけるエンパワメント実践過程について整理する。そのなかでまず欧米でのジェネラリスト・ソーシャルワークを参照しながら、わが国独自の方法論の精緻化を図るため、ジェネラル・ソーシャルワークにおけるエンパワメント実践過程などについて整理する。エンパワメント実践過程については、個人的、対人的、政治的な次元や対話・発見・発達などの展開が整理されており、その関連性を深めながら成果を摂取していく。そしてジェネラル・ソーシャルワークにおけるエンパワメント実践過程における協働アセスメント局面について検討する。 加えて支援ツールの開発については、昨年度に引き続き、支援ツールの基礎開発を行っている研究会への継続的な参加により、1.支援ツール開発と活用に関する知識の獲得、2.支援ツールに導入する生活支援に関わる情報項目(質問内容)の検討を行う。特に支援ツールに導入する生活支援に関わる情報項目については、現行支援ツールについては多領域のアセスメント項目を一度に展開することの困難さがあるため、ジェネラル・ソーシャルワークの適用可能性が高く、社会福祉士の配置義務のある地域包括支援センター版を先行して量的調査を実施し、その結果をもとに生活に関わる他の指標との相関などもみながら項目の妥当性・信頼性の検証を行う。そしてその情報項目を導入した支援ツールを利用者やソーシャルワーカーへ試用し、参与観察や検証を行っていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度については、まず物品費に関して支援ツール活用に向けた検証用のノートパソコンを購入予定であったが、基礎となる支援ツール開発の遅れもあり、できる限り最新のものを利用するほうが望ましいと考えたため、翌年度に繰り越すことにした。また開発に係る費用についても、上記と関連して昨年度と同様、1.調査結果を充分に検討したうえで使用を検討すること、2.支援ツール検証のための費用もふまえて執行することが望ましいと判断し、翌年度に繰り越すことにした。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度に引き続いて研究計画で計上した内容を基礎に、充分に執行できていない費目を中心に使用する。まず物品費では、先行研究の整理により継続的に理論的研究を行うために関連図書の購入に使用する。また調査・検証用のノートパソコンに係る物品購入に使用する。次に旅費については、支援ツール活用に向けた検証や研究会・学会への参加による成果報告などを中心に使用する。人件費・謝金については、調査協力・参加者への謝礼、検証作業に伴う研究補助などの費用として使用する。最後にその他については、支援ツールの開発に係る費用や通信費・会議費として本項目以外の支出状況に応じて使用する。
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