研究課題/領域番号 |
26380757
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研究機関 | 北星学園大学 |
研究代表者 |
杉岡 直人 北星学園大学, 社会福祉学部, 教授 (10113573)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 地域食堂 / 生活支援サービス / NPO事業 |
研究実績の概要 |
地域食堂は、食堂運営のみでは事業の存続に必要な収益を見込むことは難しい。事例調査やアンケート調査では、地域社会に必要な取り組みでありながら、食材の安全性や価格の抑制にともなう人件費の抑制による経営上の負担や人材確保の課題など、厳しい運営状況に置かれていることが浮き彫りになった。介護保険の制度改正にともない、今後、制度外であった家事援助や子育て支援などの生活支援サービスに関しても協力を求められることが想定される。介護保険制度は2000年にスタートしたが,現在、要介護・要支援の認定者数は初年度の二倍近くになっている。ここで政策課題の中心となってきたのが、要支援や軽度の要介護者へのサービスを効率的に抑制し、重度の要介護者へ重点的にサービスを供給するためにはどうするべきか、言い換えれば,軽度の人たちに対するサポートを介護保険制度の中で扱わないで済む仕組みをどのようにつくりだすのか課題となっている。 生活支援サービスを積極的に導入している地域食堂の事例調査を通じ、事業の安定的な存続を図りながら、子育て支援や見守り、サロン活動などを通じて地域コミュニティの生活課題解決に向かう総合的な地域の拠点となる取り組みに対する行政と担い手=高齢者が働き続けられる仕組み、障がい者や未就労者の就労機会を非営利活動団体との協働のあり方が地域福祉における公私協働の重要課題として通じることがみえてきた。 (1)事例調査(北海道内16ヵ所、道外4ヵ所) (2)シンポジウムの開催(2016年2月23日) 「地域食堂=コミュニティ・レストランの可能性と持続条件を考える」 北海道内・外の4名のシンポジスト(地域食堂運営責任者)による実践報告とコメンテーター2名(地域食堂研究者)からの論点整理と参加者(地域食堂実践者を含む関係者)全体討議を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
設置主体および運営主体ともNPO法人が最も多く、活動目的は、「地域の活性化(賑わいの創出や居場所づくり等)」および「高齢者の食生活支援」、「住民の食育支援」や「世代間交流」あるいは「障がい者の雇用」など、当該の地域課題に対する取り組みを意識しており、少子高齢化あるいは過疎と商店街の空洞化を受けた地域再生の担い手として活動していることが明らかにされた。 使用建物は、設置者の自己所有、その他<貸店舗・元病院・民間施設の一部等>となっており、公共施設の利用は少ない。経営は300万程度の収入と支出で1日20人程度の利用客を支えているのが実態であるから、経営的な安定は困難となっている。まちづくりを支える事業を担うこれらの取り組みの重要性を考えると、食堂の維持費や人件費等の固定費用の負担の軽減を図る上で公的施設の利用や借り上げ費用の設定による公的支援の必要性は高いといえ、地域食堂運営の実態が浮き彫りにされた。したがって、当初の予定についてはほぼ順調に進行しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
地域食堂の運営主体、活動目的を参考にして運営形態別に五つに分類(ワーカーズ運営型、住民主体運営型、個人有志運営型、母体組織運営型、障害者就労支援型)した結果、母体組織運営型が多い傾向にあり、いずれの類型も採算について(アンケート結果では、「赤字気味」「ほぼ収支のバランスが取れている」が約半数ずつ、黒字は5%程度)余裕があるとは言えない。まちづくりを支える事業を担うこれらの取り組みの重要性を考えると、食堂の維持費や人件費等の固定費用の負担の軽減を図る上で公的施設の利用や借り上げ費用の設定による公的支援の必要性は高い。また、経営を継続的に支えていくためには複合的事業展開(子育て支援や見守り、配食、サロン活動などを通じて地域コミュニティの生活課題解決に向かう総合的な地域の拠点となる取り組み)の工夫と開発)も必要となることから、これらの事例に該当する調査をおこなう。 調査によると、現在、生活支援サービスに取り組んでいない地域食堂も今後、取り組みたいと考えていることが確認されている。地域食堂が生活支援に接続するケースには、①食堂事業からスタートし、地域のニーズに対応して生活支援サービスに取り組むようになったもの、②もともとは高齢者の在宅福祉活動、子育て支援活動などから始まり、その中で食に関わるニーズが発見され、会食や弁当の配達の形式を取って食生活支援に着手するようになったものに分けられることが考えられる。地域食堂の運営には、慢性的な財源不足(赤字経営)、利用客の少なさ、担い手不足、品質の維持や向上が困難などの課題があるが、生活支援に取り組む地域食堂は、イベントの企画、行政の事業受託、地域の団体との連携によって食堂の運営課題と地域課題の解決に取り組む(生活支援)コーディネーターの役割を含めて、生活支援サービスの推進において運営類型別の地域食堂の課題と今後の展開について考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費等の計算上、調査先の一部変更などにより差額が生じたためである。
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次年度使用額の使用計画 |
調査結果に関するプリント資料の協力者への送付にかかる切手代等に充当する。
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