研究課題/領域番号 |
26380758
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研究機関 | 東北学院大学 |
研究代表者 |
増子 正 東北学院大学, 教養学部, 教授 (80332980)
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研究分担者 |
李 在檍 新潟青陵大学, 社会福祉学部, 准教授 (40460323)
高橋 信二 東北学院大学, 教養学部, 准教授 (50375482)
大澤 史伸 東北学院大学, 教養学部, 准教授 (60297190)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 地域福祉 / 共同募金 / ファンド・レイジング |
研究実績の概要 |
当該年度の主な研究計画は、募金額が着実に増加している韓国と台湾の共同募金のシステムを調査して、その特徴を整理することに重点を置き、①United Way of Taiwanの組織と募金形態と募金全般におけるマネジメント体制、②韓国における共同募金額と経済情勢の関連性の検証に重点をおき研究を進めてきた。 ①については、英国United Wayの流れを受けて1992年に設立して23年目を迎える組織である。特徴としては、完全な形での「テーマ型募金」の体制をとっていて、「教育」「経済」「健康」の3分野の社会問題を解決するNPOに配分をおこなっている。 配分については、100名に及ぶ審査員(専門官)が配置されており、8割は大学の専門職がその役割を担っている。募金の配分を受けたNPOは当該助成事業が終了するまでの間に中間指導を受けなければならず144種の専門職(ボランティア)によるカウンセリングを受けて確実に助成事業が遂行されるようにコントロールされる。United Way of Taiwanは、コミュニティのニーズに単に資金を注入することで終わるのではなく、やチェック体制を徹底することで集められた資金が確実に活かされるようなマネジメントがなされていることは、これからのわが国の共同募金に課せられている「共同募金への理解の向上」に示唆を受けるものである。 ②については、前年度の韓国共同募金会への調査から1999年から2013年までの韓国の共同募金額の推移と名目GDPが強い相関を示していた(r=0.971)が経済情勢の変化にどのような影響を受けているかを注視する必要があり、当該年度での調査では募金額は減少しておらず、個人募金としてカウントしている「商店寄付型プログラム」においては2013年末で7000ヶ所であったものが2年間で9000ヶ所を超えている現状があった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①韓国における共同募金のシステムについては、前年度の現地調査と当該年度における現地調査により、韓国共同募金会の組織体制と特徴を整理うることで、わが国の共同募金が抱えている課題を整理する作業が順調に進んでいるとともに、ここまでの研究の成果を、日本地域福祉学会第29回全国大会で発表することができている。具体的には、韓国共同募金会の組織・職員数・運営費、事業内容、募金方法、募金プロセス、寄付者管理プログラム、寄付者への自省措置、配分の仕組み等が発表の主たる内容である。 また、増子正・高橋信二・李 在檍・大澤史伸「韓国における共同募金のシステムに関する研究」東北学院大学教養学部論集第170号、2015年3月で発表するに至っている。具体的には経済情勢により募金額がどのような影響を受けるかを分析したものである。韓国における募金額は名目GDPと強い相関が認められる一方で、わが国に於いては名目GDPが2000年以降安定しているにも関わらず現象を続けている現状分析が主たる内容である。 ②台湾における共同募金のマネジメントに関しては、当該年度における現地調査により、募金の配分が単に資金の注入におわることがないように、専門職によるカウンセリングや対象となる事業を遂行することをサポートする体制が作られていることが明らかになったことにより、わが国の共同募金システムが抱える課題解決に示唆が得られたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
共同募金をファンド・レイジング化することにより安定的な募金額を確保している韓国と、台湾における共同募金のマネジメントについて整理することは、わが国の共同募金を継続する上で重要な意義を有していることから、最終年度は、①韓国及び台湾におけるファンド・レイジングとしての共同募金の課題を現地調査から整理する、②山口県共同募金会の現地調査をとおしてわが国におけるファンド・レイジングの現状と課題を整理する、③共同募金のファンド・レイジング化に求められる要件の仮設モデルの検討をおこなう。 仮設モデルの検討においては、中央募金会の調べから共同募金に取り組んでいる43カ国の中で募金額の著しい伸びを示しているのが韓国と台湾であり、当該年度の現地調査データと次年度の現地でのヒアリングを行って、共同募金システムをマネジメントするための要件を、「ソーシャル・キャピタル」「マーケティング」「広報」「評価とモニタリング」「スチュワートシップ」「アカウンタビリティ」で構成する予定である。 以上のことから、「地域福祉の推進」という抽象的な我が国の共同募金のスタイルから、「具体的目的の設定→賛同型募金→評価と結果のフィードバック→改善」というPDCAサイクルを持たせたファンド・レイジングを意識した共同募金の今後のあり方を提案する。
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次年度使用額が生じた理由 |
102,401円は、山口県共同募金会におけるファンド・レイジングに関する調査が実施できなかったためである。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は山口県共同募金会を対象としたヒアリング調査が実施できる見通しであることから全額を執行する。
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