研究の最終年にあたる平成29年度は,全国の中学校・高等学校に所属する養護教諭,スクールカウンセラー,スクールソーシャルワーカーに対して実施した生徒のメンタルヘルスの実態とその対応に関するアンケート調査のデータ分析を行った。 相談を受けた生徒の主な相談内容では友達や教員などとの人間関係,家庭環境の問題,不登校や保健室登校の問題のほか,睡眠や自傷行為,摂食障害,精神病エピソードなど多岐にわたり,それぞれが相互に影響しあっていることがわかった。養護教諭は学校全体の健康管理も担うことからその業務量は多く,課題を抱えた生徒への対応に時間的および学校全体の取り組みの面で困難を抱えている。また,スクールソーシャルワーカーおよびスクールカウンセラーの配置状況はまだまだ十分とはいえず,相談をしたい生徒に即座に対応できるような雇用状態にもなっていないということが明らかになった。相談環境とシステムの整備がいそがれる課題であり,相談をしたい生徒がいつでも相談室に行くことを認める学校全体の共通認識と連携がまずは重要である。システムの中には,スクールカウンセラーおよびスクールソーシャルワーカーの常勤が求められる。そのような環境とシステムが整ったうえで,メンタルヘルスに関する知識や対応法について保護者向け,生徒向け,また教職員向けに行うことが求められる。そのほか,これまでに得られた福祉施設(若者を対象とした)の職員へのインタヴュー調査などを合わせ,研究全体の成果を論文としてまとめ,学会での口頭発表および論文投稿の準備を行うことができた。
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