本年度は介護サービスの需給調整のためのエリアマーケティングの有効性を国内外の学会等で報告することを目的として研究を進めてきた。予定通り、日本介護福祉学会、韓国老人福祉学会において日韓両国の介護サービスの供給状況と基盤整備のためのエリアマーケティングの有効性を提示した。そのうえ、持続可能な長寿社会に向けた介護サービスの基盤整備のための政策提言を行った。 具体的には、①事業者に対する補助金支給や介護報酬の地域加算、②良質な介護サービス事業者をより積極的に育成・誘致、③介護職員の給与水準の引き上げを通した介護職員の待遇改善、④エリアマーケティング(商圏分析)を通したデータに基づいた地域差の可視化と要因分析などを提言した。また、保険者による介護サービス給付適正化に向けた取り組み、自治体の財政負担と介護サービス計画の適切性を考慮した介護保障制度の再構築などについても提言した。 なお、昨年度の継続研究として、埼玉県における訪問介護事業所、有料老人ホーム、高齢者向け住宅の需要と供給余地分析を通して、埼玉県内の介護サービス需給の状況と地域格差を明らかにした。「スウェーデンにおける介護サービスの供給状況と地域間格差の検証」については、援助判定員というケアマネジャーが一人当たり受け持つケース数に4倍程度のコミューン間格差があること、在宅ケアの肝である「安心(緊急)アラーム」の全コミューンの整備状況、介護の付いた特別住宅のコミューン間の地域格差などについてリサーチしたものの、論文として研究成果を公表することはできなかった。当初予定していた国際介護政策セミナーにおけるエリアマーケティングの有効性の検証については、関係者間の調整不足により、行うことができなかった。
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