本研究の目的は、養護者による高齢者虐待が発生している家庭内の、虐待者と被虐待者との関係性を、①家庭内暴力を理解する際に用いられている「権力」と「支配」の視点からとらえ直し、虐待が発生する構造と要因、その影響をタイプ別に分類・整理することを第1の目的としている。そして、その分析から、②虐待者と被虐待者の関係性に焦点をあて、双方に対し一体的な支援方法(ソーシャルワーク実践)を構築することを第2の目的としている。 29年度は、前年度までの3ヵ年の研究成果である、「養護者が虐待をしてしまう理由」による5つのタイプ、①権力と支配型、②ストレス衝動型、③メンタル特性型、④現状否認型、⑤承認欲求型の、各タイプの特徴と具体例、支援の視点と支援方法について整理したものを、高齢者虐待防止実践現場の意見を踏まえて修正、加筆することを中心に取り組み、報告書にまとめることに時間を費やした。 当初は28年度までの研究期間であったが、研究成果として整理してきた「虐待をしている養護者のタイプ化と介入方法」について、高齢者虐待対応をしている実践現場の方々の意見を伺い、検証を行う機会を持つことで29年度へ延長をすることとなった。これは、研究成果を精緻にしていくために必要な過程であった。 その結果、本研究の成果を、報告書にして公刊することはもちろんのこと、埼玉県や茨城県などの都道府県、千葉県市川市や松戸市、東京都葛飾区、立川市などの市町村の高齢者虐待防止研修の折に報告する機会が持て、現場に還元し、意見をいただくことができた。また、日本高齢者虐待防止学会においても報告した。今後も研究成果を地域社会に還元し、高齢者虐待防止に寄与していきたい。
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