研究課題/領域番号 |
26380769
|
研究機関 | 淑徳大学 |
研究代表者 |
稲垣 美加子 淑徳大学, 社会学部, 教授 (30318688)
|
研究分担者 |
長谷川 万由美 宇都宮大学, 教育学部, 教授 (70308104)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | ファミリーソーシャルワーク / 母子生活支援施設 / 支援困難ケース |
研究実績の概要 |
本年度は、当該研究について、具体的な①フィールドワーク、②文献収集の計画をたて、順次研究に着手した。研究会を計4回、フィールドワークの打ち合わせを計3回実施した。各会の研究会はフィールドワークと連結し、特に宮城県、埼玉県でのフィールドワークにおいては、関係機関、職員から一定の示唆を得て、今後の研究の方向性が確認された。 まず、宮城県での聞き取りは被災地域としてひとり親家庭の生活課題の把握について現状認識の確認を試みるとともに、従来の施策の有効性について機関・施設から聞き取りを実施した。次に、埼玉でのフィールドワークにおいては、試論的に母子生活支援施設の職員より、現状の課題についてインタビューによる聞き取り調査を実施した。現在その録音内容について順次質的解析を試みる予定である。 現在までのところ聞き取りメモを参照して事例作成を試みている。特に従来の研究仮説と大きな相違はないものと判断している。母子生活支援施設が支援に困難を感じているケースについて、従来にも増してファミリー・ソーシャルワークによる介入が必要なものと判断される。さらにインタビュー内容をGTAを用いて分析を加え、エスノグラフィを作成することによって、現状の端的な理解を試みたい。 文献研究については、国内文献30件ほどの収集ができたが、当該研究が意図している内容の文献の収集は必ずしも順調ではない。実際にファミリー・ソーシャルワークの施策や理論、実践に言及したものは少なく、いわゆる家族支援やそれに関連する専門職について、ファミリー・ソーシャルワーク、ファミリー・ソ-シャルワーカーと呼称しているにすぎない文献も散見された。この点は次年度の課題としてさらに精査を加えたい。グランデッドセオリーの文献については文献数・内容ともに豊富で、今後の分析方法の選択に視座を得られる状況にある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
既述のように当初意図した研究の焦点・分析方法については必要な検討・フィールドワークの途についているものと判断している。現時点での成果について一定の分析を加え研究の方向性の確認もできている。 稲垣はこの成果をもとに、第54回 関東ブロック母子生活支援施設研究協議会において、研究成果の一部をシンポジュウムで公開、並びに、同ブロック研修会では千葉県内2施設と共同して支援困難ケースのモデルケースの提示を試み、参加者から意見聴取をえるとともに、日頃の介入方法について実践事例の照会を得た。これにより、当初の研究計画の補足的研究として、研究の焦点化の背景となる現状認識については、確認ができたものと判断している。 既述のように、文献研究に一定の成果をみせていること、研究仮説の検証に一定の確認ができていることから、研究は一定の進捗状態にあるものと判断される。 ただし、具体的なフィールドワークの日程調査委がうまくいかず、インタビュー調査が遅延している状況にあり、実際の調査は次年度前半に実施する予定となっており、この点において研究の浸食状況には課題があるものと判断され、研究の達成度には課題があるものと認識している。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度においてはまず、現在分析途上にあるパイロットケースをグラウンデッド・セオリーを用いて分析し、一定のエスノグラフィーが描き出せるか、成果を確認したい。従来の文献研究から、グランデッド・セオリーの有効性については一定の効果が期待されるものと判断している。この分析をもとに、選択的サンプリングを重ね、さらに理論的サンプリング、領域密着理論の試論を構築したい。 そのためにも、データのストックは必須であり、今年度企画していた聞き取り調査を速やかに実施したい。現在のところ今年度関東ブロックの研修かいで協働した千葉2施設に加え1施設との調整も進み、支援困難ケースにつて資料提供を得ており、聞き取り日程の調整中である。6月には再度宮城県を訪問し、インタビュー調査を実施すべく日程調整中である。東京の2施設についても、アポイントメントを終え、日程調整が済み次第調査を実施する予定である。 課題となるのは、福島県でのフィールドワークであり、被災ケースに関する聞き取り調査の調整にややとまどっている状況がある。当初予定していた聞き取り対象職員が退職し、再度研究依頼から仕切り直しとなったため、今後もフィールドワークの実現には若干の調整の時間を要するが夏までには聞き取りを終えられるよう日程調整する予定である。 次年度の研究の焦点は後半の分析から理論生成の過程であるものと判断している。ここでは分析が恣意的な分析に陥らないよう、各々ひとり親支援のスーパーバイザー、グランデッドセオリーのメンターに検証の妥当性の助言を得ながら、分析を進めたいと考えている。この分析においても、理論的サンプリングにはファミリーソーシャヤルワークの文献が不可欠であり、上記のフィールドワークと並行して夏までに再度国内外の文献研究の精査を試みたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初の研究計画が遅延し、証文品等フィールドワークにかかる諸経費、消耗品等を購入しなかったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度出張、購入予定。
|