研究課題/領域番号 |
26380776
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
小林 理 東海大学, 健康科学部, 准教授 (80338764)
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研究分担者 |
岡部 卓 首都大学東京, 人文科学研究科(研究院), 教授 (40274998)
西村 貴之 北翔大学, 生涯スポーツ学部, 准教授 (60533263)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 自治体の政策実施状況 / 生活保護ワーカーの工夫 / 子ども支援員の課題 / 生活保護有子世帯の支援課題 / 就学・進学支援 / 子供の貧困対策推進制度 / 業務の標準化 |
研究実績の概要 |
2年目の目的は、生活保護受給で子どものいる世帯の修学・進学の課題について、1)制度と政策動向の基礎的な情報収集を継続することと、2)実践状況の具体的な調査を実施することであった。 研究成果としては、第63回日本社会福祉学会秋季大会にて、口頭発表を共同報告にて「生活保護受給融資世帯の養育者にとってのソーシャルワーカー」を行うとともに、情報収集の結果を「研究成果報告書」として中間報告を取りまとめ、刊行した。 具体的な成果の内容としては、上記目的の1)については、法改正により新たに実施された、生活困窮者自立支援制度の設計と実施体制、モデル事業等の状況について文献資料等の情報収集を行うとともに、複数のモデル事業的な自治体を訪問し、子ども支援の現状と新たな生活困窮者自立支援制度実施後の状況の変化について情報収集を行った。上記目的の2)については、A県の福祉事務所における子ども支援員及び生活保護ワーカーを対象とする60分程度のインタビュー調査を実施した。調査は、年度をまたがり継続中であるが、幾つかの注目すべき調査結果が明らかとなってきている。調査結果のまとめは、調査の全体が完了してから丁寧な分析を行って整理すべきであるが、調査途中におけるインタビューのポイントとして次の事項が挙げられる。一つは、子ども支援員の業務体系が、これまで具体的な標準化がほとんどなされておらず、支援員として配置される際に、各自がそれぞれの方法で、職場環境を整備したり、支援方法の開発を行って来なければいけなかった実態があること、二つには、生活保護ワーカーが、子どもの状況を把握したり支援を行うことは、生活保護ワーカーの業務としては、優先順位が必ずしもたくない中で、ワーカーが自ら様々な工夫を独自に行っている実態があること、等の状況が見られており今後整理していきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1.国及び自治体の動向については、生活困窮者自立支援制度の施行にともなう、従来各自治体で進められてきた、子ども支援事業の「状況変化」という具体的な研究視点が設定できたことで、自治体の財政状況による事業自体の取り組みの違いという課題が新たに明確になってきたことである。このことは、従来実施されてきた子ども支援の自治体ごとのばらつきの課題をさらに浮き彫りにするとともに、従来やられてきた支援の積み上げや業務の標準化の課題を発見することにつながる視点となった。 2.実態調査については、調査対象を子ども支援員や生活保護ワーカーの独自に取り組まれている支援の工夫や課題に焦点化して設計することができたとともに、A県の各福祉事務所における活動の実態を、子ども支援員とともに日頃連携している生活保護ワーカーとともに調査を実施できていることである。まだ調査は残っているが、当初の1年計画の調査実施から、90%が終了し、順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
当面は現在実施している子ども支援員と生活保護ワーカーの聞き取り調査を継続し、完遂させることが第一の目標である。さらに、得られたデータを質的に分析する作業を丁寧に行うこととしたい。共同研究者が、複数回集合して、データ分析を共有し、テキスト分析やカテゴリー生成を共同して行うことで、分析の制度を上げていく工夫を重ねることが重要な作業となる。こうして得られた分析結果をいかに今後の自治体の政策形成やプログラム開発につなげられるかも今後の課題となる。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究会議の開催と自治体の情報収集を計画し、一部実施したが、聞き取り調査の進捗状況に合わせて、研究会議と自治体の情報収集を追加して実施していくことが、研究の進捗にとって重要と判断したことから、聞き取り調査の今後の継続に合わせて、実施していくよう計画を繰り越したことによる。 また、インタビューがすべて終了した後に、逐語録作成のための文字おこし委託のための費用が今後計上される。
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次年度使用額の使用計画 |
上記の理由から、今後、聞き取り調査の完遂と逐語記録の作成を行い、とられたデータの質的分析のために、複数回研究会議を行い、テキスト分析やカテゴリー生成の作業を複数回共同で実施し、分析作業の精度を上げていく工夫を行うとともに、聞き取り調査で出てきた課題について、継続的に自治体に情報収集を行う計画である。
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