2014 年度実施状況報告書

高齢者施設におけるケアワーカーによる看取り介護の実践と課題

研究課題

研究課題/領域番号	26380778
研究機関	日本大学
研究代表者	金子絵里乃日本大学, 文理学部, 准教授 (40409339)
研究分担者	澤田有希子関西大学, 公私立大学の部局等, 助教 (60425098) 佐藤繭美法政大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (90407057)
研究期間 (年度)	2014-04-01 – 2017-03-31
キーワード	看取り介護 / 高齢者施設 / 特別養護老人ホーム / ケアワーカー
研究実績の概要	近年、福祉現場において看取り介護の中心的な役割を担っているケアワーカーの実践や彼らが日々の実践で感じていることを明らかにし、看取り介護現場に対する理解を深め、ケアワーカーをサポートする教育体制や職場環境を整えていくことが必要だと考える。そこで、本研究では、まず看取り介護に関する文献研究を行い、この先行研究をもとに聞き取り調査において問う内容を検討した。そして、①看取り介護を経験したケアワーカーについて個別に聞き取り調査（プレ調査）を行い、看取りケアを行うケアワーカーが行うケアの実際と役割、必要と考えられているケアの内容、ケアワーカーが感じる看取りの難しさ、必要と考える知識や研修内容、ワーカー支援の状況等を質問した。次に、このプレ調査と文献研究を踏まえて調査票を作成し、ケアワーカーの看取りケアの実践状況と課題を把握するための基礎的な統計データを得ることを目的として、②全国の特別養護老人ホームに従事するケアワーカーを対象とした量的調査を実施した。 ①聞き取り調査は、調査協力への了解が得られた関西の政令指定都市にあるA特別養護老人ホームに従事するケアワーカー8名（若年層4名、ベテラン層4名）を訪問し、1時間程度の半構造化面接調査を実施した。調査期間はH26年7月であった。 ②量的調査は、全国の特別養護老人ホームから47都道府県ごとに各25施設を無作為抽出し、1175施設に調査票を2部ずつ配票し、介護職員2名（介護主任および他1名）への調査協力依頼を行った。回収された調査票は483部であり、回収率は20.6％であった。調査期間はH26年12月～H27年1月であった。調査票に含まれる項目は、（1）ケアワーカーの看取りに対する思いや意識、（2）ケアワーカーの実践内容、（3）ケアワーカーが必要と感じているケアや教育研修内容、（4）仕事の満足度などであった。
現在までの達成度 (区分)	現在までの達成度 (区分) 2: おおむね順調に進展している理由研究計画において予定していた平成26年度の看取り介護に関する文献研究、プレインタビューの実施、調査の設計については、当初の予定通り、すべて実施することができた。また、平成27年度に予定していた量的調査についても、すでに実施を終えており、現在はデータ入力を終え、データ整理と確認を行っている段階である。今後はこれらの統計データの分析を実施していく予定であり、この量的調査によって明らかとなったケアワーカーの看取り介護の実践課題や看取りに対する不安の背景を分析し、より具体的な事例を分析していくために質的調査を行い、看取り介護における課題の導出を行っていく。調査の進捗状況は、非常に順調に進行しているといえる。
今後の研究の推進方策	今後は、量的調査結果の分析とまとめ、フィールド調査及びインタビュー調査を実施する予定である。昨今、高齢者施設における虐待問題が報道などでも取り上げられている。そこにはケアワーカーの人手不足によるゆとりのなさが虐待に結実していることが推測されている。こうした問題は、看取り介護という今後の高齢者福祉の課題の障壁となるといえるだろう。こうした点も踏まえながら、量的調査により明らかとなったケアワーカーの看取り介護に対する不安の背景を分析し、より具体的な事例を拾い上げるべく、質的調査を行い、看取り介護における課題の導出を量・質的調査の両面から実施したい。また、明らかとなった結果については学会発表、投稿論文等で公表したいと考えている。
次年度使用額が生じた理由	次年度使用額が生じた理由については、量的調査における調査票配布の段階で、想定よりも低価格で配布が可能となったことと、フィールド調査（プレ調査）において、研究担当者の勤務地近郊で実施可能となったことにより、旅費が抑えられたことによる。
次年度使用額の使用計画	次年度は、量的調査において、分析を行う必要があるため、SPSS Statistics23.0のソフトを購入する予定である。また、フィールド調査及びインタビュー調査を実施するため、出張旅費に多くの費用がかかることが推測される。他にも、得られた資料の分析にも研究費用を用いたいと考えている。