研究課題/領域番号 |
26380784
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
小長井 賀與 立教大学, コミュニティ福祉学部, 教授 (50440194)
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研究分担者 |
川邉 譲 駿河台大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (90544940)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 再統合支援 / NGO / 社会的企業 / 社会連帯経済 / 多機関連携組織 / 生活困窮者 / コミュニティ形成 / 社会政策 |
研究実績の概要 |
2015年度は、更生した元犯罪者へのインタビューに重点を置いて研究を進めた。しかし、今は一般市民である元犯罪者にインタビューするのは容易でなく、代表研究者の小長井は21件、分担研究者の川邊は14件と予定したより少ない実施数であった。ただし、川邊においてはまとまった数の女性を対象とできたので、女性を一つの類型として考察できる見通しが持てた。一方、小長井においては、従来から対象としてきた「更生保護施設」退所者に加えて、新たに「自立準備ホーム」在住者も対象にでき、元犯罪者の更生過程での社会的受け皿の機能を広く考察することができた。 また、小長井は海外を視察し、米国の裁判・刑務所・保護観察所等犯罪者処遇の仕組み、フランスにおける元犯罪者の再統合支援のNGOの機能や社会連帯経済を活用した就労支援策、オランダにおける犯罪者等を地域の関係機関・団体に繋げるための自治体内に設置された多機関連携組織の機能について学んだ。 視察を通じて、犯罪者の再統合支援の仕組みと支援内容について国際比較ができた。日本と対比して、欧州における再統合支援の仕組みの特徴として、対象を元犯罪者に限定せず一般の社会生活困窮者と同じ枠組みで行っていること、支援主体に公的機関だけでなくNGOや一般住民が多く参加していること、再統合施策がコミュニティ形成と連動していることが確認できた。また、厳罰化の傾向が強いとされてきた米国の犯罪者処遇も、「実証研究の成果に基づいたソーシャルワーク」への指向性を強めており、刑事政策と社会政策との連携が進んでいることが学べた。 さらに、小長井は法務省保護局幹部職員と共同して「保護観察」に関する出版の編集作業を行い、2016年4月に出版した。その過程で、日本の犯罪者の社会内処遇の現状と課題を詳細に確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
更生した元犯罪者に対するインタビュー調査を2014年度と2015年度の2年間で100件実施するという計画が、実行できていない。一般人に対するインタビュー調査の難しさに対する見通しが現実的でなかった。目標数を下降修正せざるを得ないが、実施期間を2016年度の前半まで延長し、少しでも目標数に近づけたい。 一方で、海外への視察は精力的に行っており、海外の実務家や研究者の支援を得て、元犯罪者の再統合施策に関する情報を豊富に入手し、同施策について広くかつ深く分析できつつある。それを通じて、日本の制度や施策の特徴も、事前の期待より綿密に把握できている。
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今後の研究の推進方策 |
2016年度前半には更生した元犯罪者に対するインタビュー調査を可能な限り実施し、年度後半からは調査結果の分析と考察を行う。 また、欧米のいくつかの国で視察し、犯罪者処遇の制度と施策の比較研究を更に進めていきたい。 これらの成果を踏まえ、秋期には内外の犯罪学関連の学会で成果の中間報告を行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
元犯罪者に対するインタビュー調査の実施が予定数より少なかった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度にも可能な限り元犯罪者に対するインタビュー調査を実施したい。
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