昨年度実施した精神保健福祉士を対象としたアンケート結果から、精神障害者の意思決定支援を行う上で、意思を醸成し、具体的なイメージを持てるように働きかけることの重要性が明らかとなった。その方法として、多様な方法による情報提供の重要性が示めされた。また、支援を行う前提として、あたり前のことではあるが、クライエントとの信頼関係を築くことが重要であり、ニーズの実現に向け、機関内外の人的・物的資源を活用し、調整することが精神保健福祉士の役割だと認識されていた。かかわりの当初は、支援者が把握したニーズとクライエントのニーズには食い違いがあるが、信頼関係を構築しながらかかわるプロセスの中で、その食い違いが減少していくことも示唆された。 前述したアンケート結果をもとに、今年度は、意思決定を支援する専門職の育成プログラムの構築を行った。東京、神奈川、埼玉、千葉の精神保健福祉士協会に協力を依頼し、年1回開催されている「4都県権利擁護研修」において、人材育成プログラムを実施した。参加した精神保健福祉士59名を対象に事前事後アンケートによるプログラム評価を行った。プログラムの前半では、意思決定を支援する上で必要となる知識とその支援プロセス、ニーズアセスメントの具体的な方法などを提示した。午後は、映像を含めて模擬事例を提示した。映像を見た上で、クライエントのニーズアセスメント、意思決定支援の方法についてディスカッションを行った。研修内容への評価としては、5段階評価で平均得点が4.5点と高得点であった。事前事後の知識とスキルの獲得に関しても、すべての項目で事後評価が事前評価の得点を上回っていた。 「意思決定を支援」と言葉でいうのは簡単であるが、対象者の個別的なニーズを尊重しながら実践する必要がある。ニーズを育み、表明することへの支援を含めたプロセスが重要であることを確認した。
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