研究課題/領域番号 |
26380791
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研究機関 | 中部学院大学 |
研究代表者 |
新井 康友 中部学院大学, 人間福祉学部, 准教授 (80369701)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 孤立死 / 社会的孤立 / 孤立予防 / 公的責任 / アウトリーチ / 協同組合 / 住民参加 |
研究実績の概要 |
G-serchデータベースを利用して、全国紙・地方紙の新聞記事から孤立死対策の記事を検索した。その結果、新聞記事では孤立死対策として紹介されていたが、活動内容を確認すると、社会的孤立対策のものが多かった。また、その活動内容は多岐にわたっており、住民によるサロン活動、行政機関による見守り活動(アウトリーチ)、協同組合の組合員(班会)活動、買い物難民支援などがあった。また、孤立死は、都市部での問題と捉えられがちであるが、実際は過疎化が進んでいる山間地域でも孤立死対策に取り組んでいた。孤立死は社会的孤立状態の延長線上に起こる可能性が高いので、社会的孤立対策は、孤独死対策に有効であることを改めて確認した。今日、社会的孤立に関する研究は、多くの研究者が取り組んでいるため、多くの学会や研究会に参加して、社会的孤立に関する研究についての情報収集も積極的に行った。 東京都港区が行っている「ひとり暮らし高齢者等見守り推進事業」について調査を行った。「ひとり暮らし高齢者等見守り推進事業」とは、行政機関によるアウトリーチである。この事業の実施責任者である東京都港区高齢支援課の職員や、実際にアウトリーチを行う「ふれあい相談員」にインタビュー調査を行った。そして行政機関によるアウトリーチの必要性を裏付ける実態調査をした港区政策創造研究所の所員にもインタビュー調査を行った。また、ふれあい相談員の実践報告会やシンポジウムにも参加して、活動内容について調査した。 愛知県南部を中心に展開している南医療生活協同組合の取り組み、なかでも組合員による班会活動について調査を行った。実際に、組合員宅で活動していた班会活動を見学した。班会活動は組合員が中心となり、学習会などを企画し、組合員の居場所づくりをしていた。また、岐阜市で買い物難民支援をしている活動も調査し、現在、調査結果をまとめた論文を投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度も継続して孤立死対策に関する情報収集を行うが、平成26年度はG-serchデータベースを利用して、全国で取り組まれている、さまざまな孤立死対策の活動について整理することができた。平成26年度の孤立死対策に関する情報収集の結果、孤立死対策の活動を①行政主導型、②住民・コミュニティ主導型、③協同組合主導型、の3つの類型に整理することができた。また、平成26年度中に、それぞれの類型の活動内容について調査を行うことができた。 ①行政主導型である東京都港区のアウトリーチ活動の調査として、東京都港区高齢者支援課、ふれあい相談員、港区政策創造研究所への調査を行うことができた。②住民・コミュニティ主導型である岐阜市三田洞団地の住民による買い物支援の活動について調査を行うことができた。③協同組合主導型として、南医療生活協同組合の班会活動についても調査を行うことができた。特に、②の活動については、買い物難民になっている高齢者へのインタビュー調査も行え、貴重な調査結果を得ることができた。現在、この調査結果をまとめた論文を投稿中である。 そして、平成27年度に実施予定の韓国調査についても、すでに韓国の大学教員とメールや電話等で簡単な打ち合わせを行うことができた。平成27年度前半にも韓国調査に関する詳細な打ち合わせを行うが、韓国調査に関する事前準備については、かなり進展している。 上記の結果から、「(2)おおむね順調に進展している」と自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度前半は、平成26年度の研究成果のまとめと韓国調査の準備を行う。韓国でも孤立死は社会問題になりつつある。日本における社会的孤立の状況を踏まえてか、韓国では集合住宅の一角に「敬老堂」が設置されている。「敬老堂」は、高齢者が無料もしくは低額な利用料で日中過ごすことができる施設である。また、韓国では高齢者虐待の種類の1つにセルフネグレクトがある。韓国では、高齢者虐待防止活動や高齢者虐待対応に関しては、日本のように地域包括支援センターが他の多くの業務の一環として行うのではなく、「老人保護専門機関(高齢者虐待防止センター)」が専門的に対応している。そこで、平成27年度前半は、「敬老堂」と「老人保護専門機関」に関する先行研究の収集と分析を行う。 平成27年度後半は、韓国調査を実施する。韓国・ソウル特別市にある敬老堂の参与観察を中心に研究を行う。また、忠清南道にある老人保護専門機関の所長へのインタビュー調査も行う。韓国調査には、ソウルサイバー大学・准教授の李栖瑛先生と湖西大学校・准教授の金居修省先生の協力が得られる。 平成27年度も継続して、孤立死対策に関する情報収集は行う。そして、新進的な活動があれば、調査に行く予定である。そこで、平成26年度に調査した南医療生活協同組合が平成27年4月に「よってって横丁」を開設した。「よってって横丁」開設に向けて、多くの南医療生活協同組合の組合員が参画し、組合員や地域住民の居場所づくりの施設を目指したと聞いている。そのため、平成27年度前半に「よってって横丁」の視察に行く予定である。 平成27年度は、平成26年度の研究成果を学会報告や学術雑誌への投稿を行う。
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