昨年度は、前調査で得られた臨床経験20年以上を有するベテランのソーシャルワーカー(以下、ワーカー)を中心としたナラティヴ・テキストを再分析した結果、「不在の感覚」を伴う臨床体験におけるによる自己生成は、「巻き込まれ続いている」という中動相の地平において生起する事象であるという新たな知見を導き出した。 この結果を踏まえ今年度は、同様の臨床体験の構造が臨床経験の長くないワーカーにも適用可能であるかを明らかにすることを目的にし、本来予定していた調査協力者を大幅に変更することとした。具体的には、ベテランではなく一人前から中堅にあたる「臨床経験10年未満」のワーカー9名に調査協力を依頼し、インタビューを実施した。 調査にあたっては、筆者が所属する組織の倫理委員会にて承認を得た。インタビューは、一人あたり原則として2回、60~90分の非構造化面接で実施した。得られた音声データはすべてテキスト化し、これまでと同様、現象学の知見を手がかりとしながら事例研究法を用いて分析した。まずは、インタビューで一つのまとまりとして語られた臨床体験を「節目」のエピソードとして分類した。具体的には、「大きな節目」及び「小さな節目」として大別した後、さらに内容を分類した。次に、調査協力者による語り全てを事例として捉え、その語り口の特徴などに注目しながら、浮かび上がってきたデータのまとまりを全体の文脈の中で捉えなおし、記述した。 以上の本研究の成果については、2018年度『聖隷社会福祉研究』または『聖隷クリストファー大学社会福祉学部紀要』などへ投稿する予定である。
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