本研究は、介護福祉士の介護現場からの離職防止に寄与するために取り組んだものである。特に、専門職教育課程を修了した介護福祉士養成施設卒業生を主な対象都市、なぜ介護現場を辞めるのか、「離職」を多角的にとらえて関連要因を探った。 本研究が重視した研究視点は次の2つである。第一は、意識よりも行動(あるいは行動実績)から「離職」を捉えようと試みたことである。先行研究では、介護職員の業務負担やストレス、バーンアウトなどと離職意識との関連性を探る研究は見受けられるものの、離職行動に関連する要因を探る研究報告は希少であった。調査対象者への2回の縦断調査の実施では、就業者だけでなく離職者を対象としたパネルデータ収集の制約など研究を進めていく上での困難性もあったが、第一回調査時に離職経験及び離職意向、第二回調査にその後の離職行動といった意識と行動との関連性を探ったことが本研究の大きな意義であると考えている。 第二は、「離職」をいかに捉えるかの整理を試みたことである。介護現場において、離職は、離職率として施設単位で把握する場合、「法人内異動」は離職にカウントされ、異動した個人は離職の意識がない、いわば「疑似離職」とでもいうようなズレが生じる。本研究では、個人の「離職」を「法人内異動」は含まず、「転職」及び「非就業」は含むと操作的に捉えて取り組んできたが、これらが未整理のままの研究も見受けらる。介護現場における「離職」の捉え方を整理したうえで、その防止方策を検討していくことの必要性を強調できたことは研究意義があると考えている。 研究成果としては、平成26年度から29年度までの4年間で二本の査読付き論文と5つの研究発表などを行うことができた。 本研究は、彦坂亮氏と永井拓己氏の研究協力者はじめ、介護福祉士養成施設の教職員及び同窓会の調査協力を得ることによって進めていくことができた。
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