平成26年度研究「子離れを決意した精神障害者の意識変容プロセス-精神障害を子どもに持つ母親へのインタビュー調査から」、平成27年度及び28年度研究「親離れを決意した精神障害者の意識変容プロセス-親世帯から独立した精神障害者へのインタビュー調査から」を実施した。これら精神障害者家族及び精神障害当事者を対象としたインタビュー調査から世帯を分けた暮らしに移行する経過において、ソーシャルワーカーの関与が多く認められた。 そこで、平成29年度は「精神障害者家族に対するソーシャルワーカーの支援観変容プロセス-世帯を分けて暮らすことを支援したソーシャルワーカーの語りを手がかりに」研究を実施した。世帯を分ける暮らしに移行することを支援したソーシャルワーカー4名を調査対象に半構造化面接を行った。今後修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチで分析を行い、論文化を行う予定である。 また、本基盤(C)研究に関わる「精神保健福祉法改正法案(「29年改正法案」)」が、第193回通常国会に上程された。前回の法改正(「25年改正法」)において、保護者制度が廃止されたものの「家族等の同意に基づく医療保護入院」を新たに創設し、保護者制度廃止は有名無実と化した。「29年改正法案」においても「家族等の同意に基づく医療保護入院」は存置された。この問題は、精神障害者家族と精神障害当事者の関係性を規定するものであり、「家族によるケアから社会的なケアへ」という流れに逆行するものである。そこで、「25年改正法」及び「29年改正法案」までの政策形成過程について行政資料を中心に精査し、非自発的入院の手続きや期間について欧州諸国との国際比較を行った。文献研究として論文化し、「家族等の同意に基づく医療保護入院に関する批判的検討-政策形成過程と国際比較の観点から」『佛教大学社会福祉学部論集』第14号に投稿論文として掲載された。
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