研究課題/領域番号 |
26380809
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研究機関 | 四天王寺大学 |
研究代表者 |
鳥海 直美 四天王寺大学, 人文社会学部, 准教授 (00388688)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | アドボカシー / ソーシャルワーク / 障害児 / 子どもの意見表明権 |
研究実績の概要 |
本研究は、わが国のソーシャルワーク実践領域において、障害をもつ子どもの意見表明権の保障を価値基盤とする権利擁護の充実を目指すものである。イギリスの子どもアドボカシーサービスの理念及び方法を援用しながら、ライフステージの移行を伴う学齢期の障害児を対象とするアドボカシーサービスの試行的実践を通して、障害児への相談支援モデルを開発することを研究目的とする。 今年度は文献研究によって、ソーシャルワーク理論において子どもの意見表明権がどのように位置づけられているかについて整理を行った。また、イギリスの子どもアドボカシーの理念及び手法について専門的学識の提供を受けて文献研究を補完した。 文献研究の結果、施設で暮らす子どもの意見表明権に焦点をあてた先行研究が僅かにみられるのみであり、子どもの意見表明権の保障を基軸にするソーシャルワークを提示していくことの必要性が確認された。 また、近接分野である障害者の自己決定に関する先行研究を渉猟したところ、知的障害者の意思決定支援のあり方や、精神保健福祉法改正の論点として挙げられている代弁者制度のあり方に関する先行研究から、本研究に援用できる知見を多く得ることができた。 さらに、イギリスの子どもアドボカシーに関する専門家から、子どもの意見表明権に特化したオンブズマン機関が国政をモニタリングする体制が敷かれたうえで、個別のアドボカシーサービスが提供されている仕組みについて学ぶ機会をもつことによって、本研究がわが国の子ども観の変容にもつながるものであるという示唆が得られた。 これらの研究成果をふまえて、次年度は、障害児の意見表明権を保障するための取り組みの現状と課題を明らかにするために、障害児相談支援事業所の相談支援専門員を対象とするフォーカスグループインタビューを実施する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
文献研究については、国内の先行研究に偏っている。また、障害児相談支援事業所1か所を対象として予備調査を実施したものの、次年度の本調査に向けてインタビューガイドを作成するまでには至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
ソーシャルワーク分野における子どもの意見表明権に関する国内の先行研究が僅かしかみられないことから、今後は海外の文献を渉猟する必要がある。 また、障害児相談支援事業所を対象とするフォーカスグループインタビューを次年度に実施するために、その準備を早急に進めていく必要がある。 なお、イギリスの子どもアドボカシーサービスにおける人材養成、契約、訪問面接、代弁、評価などの仕組みの実際を学ぶために、渡英して実践者へのヒアリング調査を実施する計画であったが、次年度は渡英日程の確保が難しいため、次々年度に延期することが見込まれている。
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次年度使用額が生じた理由 |
謝金を使用しなかった理由として、次年度の本調査に向けた予備調査として、複数の障害児相談支援事業所の相談支援専門員を対象に訪問面接調査を実施し、障害児の権利擁護にかかわる概況を把握する予定であったが、1か所のみしか訪問することができず、しかも、謝金を要しなかったことによる。
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次年度使用額の使用計画 |
謝金については、早急に障害児相談支援事業所を対象とする予備調査を実施し、フォーカスグループインタビューを実施することによって使用する見込みである。
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