本研究は、わが国のソーシャルワーク実践領域において、障害児の意見表明権の確保に向けた相談援助のあり方を検討することである。イギリスの子どもアドボカシーサービスの理念及び方法を援用しながら、ライフステージの移行を伴う学齢期の障害児を対象とする相談援助のあり方を明らかにすることを研究目的とする。 今年度は国際条約や国内法における障害児の意見表明/障害者の意思決定を巡る動向を整理した。また、小児医療分野において子どもの意見表明権がどのように取り扱われているかを明らかにし、医療モデル/社会モデルのアドボカシーについて検討を行った。 さらに、障害者相談支援専門員、自立生活センターのピアカウンセラーとともに、イギリスの障害児者のアドボカシー実践者へのヒアリング調査を実施した。調査対象は、①知的障害者のアドボカシーを担うIMCA、②障害児のアドボカシーを担うアドボケイト、③障害者の本人中心計画作成にかかわるワークショップを進行するコーディネーター、④障害当事者が主体となる相談支援事業の運営管理者である。 ヒアリング調査からは、アドボカシーサービス提供機関の独立性、社会モデルに根ざした本人中心計画の作成方法、及び、相談支援事業にかかわる運営管理への障害当事者の参加について示唆が得られた。これらは、わが国における「意思決定ガイドライン」に沿った相談支援への援用可能性が大きく、とりわけ、自立生活センターにおけるアドボカシーのあり方を再考するものとして捉えられる。なお、ライフステージの移行に伴って相談支援の担い手が変遷していくなかで、いかにして障害児者のアドボカシーの連続性をいかにして確保するかは英日両国に共通する課題であり、今後も継続的に検討するべき研究課題であることが確認された。
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