HIV陽性者の生活におけるさまざまな心理・社会的問題に対し、HIV拠点病院を含む多様な現場に所属するソーシャルワーカーが、一定の質を保って陽性者支援に取り組むことができるように、医療ソーシャルワーク支援ガイドライン作成を目的とし、2つの方法から取り組んだ。 1点目は、KJ法を用いての医療ソーシャルワーカーの業務の洗い出しと得られたデータのグループ化である。データとして得られたカードは193枚であった。 2点目は、単にどのような業務を行っているのかを羅列することではなく、一つひとつの業務をソーシャルワーカーが行う意義、目的、留意点等を明確にすることをガイドライン作成の目的とし、データ(ラベル)のグループ化の作業の中での調査対象者の語りをICレコーダーで録音し、逐語化したデータの質的データ分析である。 調査期間は2015年8月から2016年3月、調査対象者は陽性者支援の経験のある医療ソーシャルワーカー延べ4名、拠点病院に所属し、SWとしての経験年数が平均16年(±5)、陽性者支援にかかわって平均12年(±4)、陽性者支援のケース数が年間平均約189件(±311)であった。KJ法で得られたデータのグループ化と録音は研究者と協力者とで約6時間(約1時間半×4回)にわたって行った。 研究の結果、病名や感染経路、セクシュアリティに伴う個人情報やプライバシーに関しての慎重で丁寧な支援が必要であることが改めて明らかになったと同時に、そこで求められるソーシャルワーク支援は特殊なものではなく、ソーシャルワークが本来最も重視し、根底に置いている価値と倫理に基づいたものであることが明らかになったと考える。研究成果として完成したガイドラインは、全国の拠点病院、大阪府医療ソーシャルワーカー協会総会での配布、研修使用のためのブロック拠点病院への送付も行った。
|