研究課題/領域番号 |
26380815
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研究機関 | 神戸学院大学 |
研究代表者 |
西垣 千春 神戸学院大学, 総合リハビリテーション学部, 教授 (40218144)
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研究分担者 |
田宮 遊子 神戸学院大学, 経済学部, 准教授 (90411868)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 生活困窮 / 中高年 / 貧困 / 失業原因 / 予防 |
研究実績の概要 |
中高年の生活困窮の原因として、「病気」「解雇」が、雇用形態に関わらず多いことを平成26年度の研究で明らかにした。さらに非正規雇用では、雇いどめなどの理由が続き、正規雇用では「介護」による離職が生活困窮につながっているものが続いていた。
平成27年度は、研究目的にあげた困窮世帯の特徴を知ることに重きを置き研究を進めた。事例データから困窮に至る経緯について知る必要を感じ、救護施設を訪問し聞き取りを実施した。また、コミュニティソーシャルワーカーや、中小企業経営者らにインタビューを行い、勤労者の状況について聞き取りを行った。中小企業が抱える課題は共通しており、福利厚生のあり方が病気などの事情が発生した折に大企業との差異を生み出していることが把握できた。失業や生活保護率には地域差があるが、コミュニティソーシャルワーカの話からは、個別のケースに与える影響としては、家族や雇用環境の影響が失業と関連してと判断できた。中高年失業の対策として社会的企業が一つの方策として考えられるため、いくつかの社会的企業の情報について学ぶため研究会も行った。 データ分析については、世帯特徴をより深く分析するため、コミュニティソーシャルワーカーの相談記録を再度見直し、詳細なデータ(家族、生計など)を追加する作業を実施した。大まかな集計からは家族の抱える生活課題との影響がみられる。 成果については国際ソーシャルワーク学会にエントリーし口頭発表とポスター発表のアクセプトをもらっている。また、出版社からも本研究の内容を出版する決定をもらっている。平成28年度は、これまでの研究成果から予防の方策を考え、予定通り発信を中心におき研究をまとめていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ソーシャルワークを学ぶ博士課程の学生の協力者がデータ入力に加わってくれたおかげで、専門的データの扱いや新たな視点を得る勉強会が開催できたことが順調に進められる手助けとなっている。また、研究の意義を理解してくれる人が増え、情報収集がしやすい環境ができている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、追加したデータを中心に再度分析を行い、中高年失業の特徴を明らかにし、リスク介入のポイントを探り、失業による生活困窮の予防策の検討を進める予定である。研究成果は6月の学会と秋の学会で発表を行い、論文にもまとめる。研究成果を盛り込んだ著書の完成も目指す。 本研究は、ソーシャルワーカーの相談記録のデータ化による分析が主となっている。今回、データ化に多大な時間と労力を費やした。しかしながら、情報の聞き取り指針や記録方法が統一されていないために、全数および全項目の情報を得ることが困難であった。 研究の意義は非常に深く、支援に携わる専門職や施策への示唆は得られるため、精度の高い研究を行う必要を感じている。さらに、生活困窮に陥る若い世代も多く、研究対象を広げ、継続研究を行う必要がある。今年が研究助成の最終年度ではあるが、継続研究として応募していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
差異の大きな原因は、国際学会への参加が翌年度にずれ込んだためである。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度は、国際学会での発表を行うことが決定しており、生じた差異分についてはそこで活用の予定である。本年度助成金については、秋の国内学会で発表を行い、活用できる資料作成に活用する。得られた成果についても公表する機会を設け、実際に支援に携わる方々に資する研修会等の会場費などに用いる計画である。
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