本研究は、多様な福祉実践の場における新たな参加・協働の技法として「リフレクティング・プロセス」の効果の詳細を明らかにするとともに、その適用領域と場面に応じた教育・実践・評価プログラムの体系化をおこなうことを目的とする。今年度は、リフレクティング・プロセスの理論的整理、および、参加・協働のための汎用的プログラムの構築とその社会発信を行った。また、日本国内では知られて来なかった北欧の刑事司法領域における参加・協働の技法としてのリフレクティング・プロセスの活用実態についての現地調査を行った。具体的には以下の通りである。 1. 精神保健福祉専門職による研究会をベースとした利用者と職員のリフレクティング・トークの実施とその内容分析(広島県):精神保健福祉領域におけるリフレクティング・プロセスの活用を試みる研究・実践のプロジェクトとして2008年に広島県にて始動したRPP研究会をベースに、これまで取り組んできた多様なリフレクティング形式の対話のワークの振り返りと理論的整理を行った。 2. 社会福祉法人をフィールドとした医療・福祉の専門職間連携、組織間連携の実態調査とその分析結果に基づくリフレクティング・プロセスの導入(山口県):病院、高齢者福祉施設、障害者福祉施設等を有する当該地域の医療・福祉の拠点となる組織において、多職種間連携、多組織間連携を推進するため、協働的アクションリサーチを実施した。具体的には、全職員を対象とした連携の実態調査の分析結果にもとづき、職種間・部署間のリフレクティング・トークの導入とその評価を行った。 3. 国外の先進地域におけるリフレクティング・プロセス実践状況の整理と紹介:デンマーク、スウェーデン、ノルウェーを訪問し、日本国内では全く知られて来なかった北欧の刑事司法領域における参加・協働の技法としてのリフレクティング・プロセスの活用実態について現地で調査を行った。
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