本研究では、乳児院や児童養護施設における乳幼児に対する早期からの連続的な視点を持った心理的ケアのあり方を検討し、有効な方策を構築していくことを目的としている。 研究期間全体においては、最初に、全国の施設に対するアンケート調査を行って、「乳幼児に対する早期からの連続性を持った心理的ケア」に関する取り組みについて、概要を把握するとともに、特徴的あるいは有効な援助を実践している施設の抽出を行った。続いて、選定した約20か所の施設に、実際に研究者が赴いて、インタビュー調査を行うことで、具体的な取り組みや工夫等に関して、質的な面も含めて詳細に把握をして、有効だと思われる取り組みを明らかにしていった。さらに、最終段階(平成29年度)として、ある施設において、具体性を持った有効な取り組みとして、「乳幼児合同ユニット運営」の構築を行い、その運営に関して、研究者(非常勤心理士兼務)が、スーパーバイズを行いながら支援を行った。その結果、研究経過の中で得られた具体的な知見を現場に還元することができるとともに、乳幼児に対する連続性を持った心理的支援に関する有効な取り組みの方策に関して一定程度の評価を行うことができたものである。一方で、今後の里親養育の重視といった社会的養護の方向性を踏まえた上で、施設の新たな役割(里親支援、アセスメント実施等)を検討していくことが課題であることが明らかとなった。 研究成果に関しては、日本福祉心理学会の機関誌にて論文として掲載した他、同学会における研究発表も行った。また、編著者として書籍(テキスト)の発行にも携わるなど、全体を通して、積極的に研究結果の発信を行ない、社会にその成果を還元したものである。
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