昨年度までに開発した「健康情報管理システム」を実践の場に導入し、学童期、思春期の身体的、精神的、社会的健康に対する保健福祉ケアシステムとしての妥当性を評価した。実践の場の保健福祉専門職に意見を求めた結果、内容、仕様、マニュアルともに実践での妥当性が確認できたが、グローバルな地域社会では、外国籍家族への対応が必要という要望があった。そのため、0~6歳児の情報内容の英訳、中国訳を行い、「0~6歳までの情報を集積するWEB支援システム 多言語版」を作成した。今後、諸外国でのデータ集積に活用し、国際比較研究へと発展させる。 日本語版については、妥当性が評価されたため、2002年~2014年に集積した地域コホートデータを整理し、システムに全データの投入を行なった。投入したデータは、連結可能匿名化データである。思春期に及ぶ成長発達影響要因に関する科学的な根拠の提示にむけ、①幼児期の自己効力感を育む運動支援の9年後のSubjective Well-being への効果、②子ども虐待関連要因の推定、2点に焦点をあて、集積されたデータの分析を行なった。①については、自己効力感を育む運動支援がある場合、幼児期および思春期の家族形態、心身の状況、食の状況、生活状況を調整しても、思春期のWell-beingリスクを低減することが示唆された。②については、育児困難感が高い場合、ひとり親である場合に、ネグレクトリスク、身体的虐待リスクが高まる可能性が考えられるが、育児に関する相談者や協力者がいること、保健福祉専門職が適切な支援を提供することでそのリスクを軽減できる可能性が示唆された。これらの成果については、本研究終了後、論文として広く発信する予定である。3年間の本研究により開発したシステムは、今後も地域での保健福祉実践と、継続したコホート研究に活用し、さらに強固なエビデンスを創出していく予定である。
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