この質的研究は、知的障害のある13名のライフストーリーとその障害の自己認識との関係に着目する。障害の自己認識を問う複数回の質問に対し、いずれも「ある」4名、「ない」5名、「わからない」2名であり、残りの2名は肯定に変化した。これに社会モデルに基づく分析を加えた結果、13名中11名は、実は障害を自己認識していたことがわかった。障害を認識しつつ否認した主要因は、社会の知的障害への低い価値観にあり、そこから生じる侮辱・差別・虐待・暴行行為を受け、対象者は障害に否定的価値付けをしていた。一方、障害のある大人や仲間との楽しい交流、本人の望むサービス提供によって、障害に肯定的価値付けをする人々もいた。
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