研究課題/領域番号 |
26380829
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研究機関 | 龍谷大学短期大学部 |
研究代表者 |
加藤 博史 龍谷大学短期大学部, その他部局等, 教授 (50185865)
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研究分担者 |
牧田 幸文 福山市立大学, 都市教養学部, 講師 (00555336)
中谷 友樹 立命館大学, 文学部, 教授 (20298722)
小川 栄二 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (20340482)
丸山 里美 立命館大学, 産業社会学部, 准教授 (20584098)
矢野 桂司 立命館大学, 文学部, 教授 (30210305)
小澤 亘 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (30268148)
石川 久仁子 大阪人間科学大学, 人間科学部, 准教授 (40411730)
岡野 英一 龍谷大学, 社会学部, 教授 (80641737)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 地理情報システム / 孤立高齢者 / 地域包括支援 / 民生委員 / 老人福祉員 / 在日外国人 / 多文化共生 |
研究実績の概要 |
平成26年度に、研究計画に則って、大きく二つの研究実績を上げることができた。一つは、演劇という表現手法を通しての異文化の相互理解を生活者の目線で促進する試みが成果を挙げたことである。素人演劇集団である「NPO法人子育ては親育て・みのりのもり劇場」と「モア・ネット」との協働により、外国人福祉委員を対象に、その研修目的で特別養護老人ホーム「故郷の家」のホールで上演し、さらに、京都市南区陶化学区自治連合会会長や民生委員、老人福祉員など地域福祉アクターを観客に、在日コリアンの高齢者を地域で支えるテーマでユーモラスな演劇を7月6日、京都駅前の響都ホールで上演した。観客の受けとめ態度を分析した結果、受容度、共感度の高まったことが分り、手法の有効性が確認された。 二つ目は、地域包括支援センターによる孤立高齢者の支援機能を高めるために、GISに民生委員や老人福祉員等の情報を重ねていき、可視化していく意義を京都市が認めてくれ、仁和・東九条・陶化・深草北部の4地域包括支援センターでのGIS試行を、京都市個人情報保護審議会で承認してもらえ、本年1月に、情報管理に関する契約を京都市長と本研究代表者が取り交わしたところである。京都市保健福祉局長寿福祉課とともに、GISの地域福祉分野への応用という先駆的な共同研究の基盤が整えられた。 また、小澤亘と牧田幸文を中心に、民生委員や老人福祉員などの地域福祉アクターの活動内容のGISによる分析を7月、ドイツのミュンスター市で開催された国際学会「国際サード・セクター研究学会」に発表し、注目を集めた。 牧田を中心とする中国帰国者へのボランタリーな支援アクションは、「シーヤンホンの会」として、小栗栖以外の集住地域でも活発に展開しており、アクション・リサーチの意義が示されたものといえる。その他、砂川学区で高齢者のアンケート調査を予備的に行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画以上に進展しているという評価の根拠は、①演劇という手法を用いた多文化共生の理解促進に、演劇という手法が有効であることを、多くの住民の参加とアンケートによって実証することができたことである。 また、②GISシステムを活用することにより、地域包括支援センターによる一人暮らし高齢者への支援、地域の高齢者を支援する関係機関(民生委員、老人福祉員等)と連携した支援ネットワークの構築の促進を行うことを目的に、仁和・東九条・陶化・深草北部の地域包括支援センターが一人暮らし高齢者の訪問活動により得た情報を提供してもらい、GISシステムで加工することで、地域課題として分析・可視化を行い、これらの情報を地域の高齢者を支援する関係機関と共有することで、地域の特性に応じた対応策・解決策の検討・企画立案・実施につなげていくことが、承認された。 具体的には、厳しい個人情報管理を実施する条件のもとに、京都市個人情報保護条例のセキュリティ対策基準を遵守しうると個人情報保護審査会によって判断され、京都市長と研究代表者の加藤が、「研究連携に係る覚書」を、平成27年1月8日、締結することができた。 したがって、京都市の保健福祉行政あげての研究支援をいただけることとなった。これだけ大きな理解を得られたことは、当初の計画以上の研究環境の進展といえる。かつ、行政を交えて各地域包括支援センターの職員と連携して問題意識を共有化し、研究を進めて行くプロセスそのものが「方法モデル化」しうるものであり、大きな研究上の成果であるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
①地域包括支援センターの職員に、GISの基本研修を受講してもらう。②各地域包括支援センターでGIS情報インプットの設備面での環境を整える。③GISにインプットする独居高齢者の調査データの整理・統一を行う。特に、見守り必要度に関連して、軽度認知症の疑いのチェック、民生委員や老人福祉員の過去半年間の訪問実績度、介護サービス利用状況、家屋の状況、家族・近隣との往来状況などである。④引きこもりや郵便物が溜まっている状況を把握した際の対応策に関するマニュアル作り、等に関して協働して試行していく。 また、認知症の早期発見と早期対応に関連して、「認知症の高齢者が住み良い地域」とは何かのグランドビジョンを探っていく、シンポジウムを開催したい。かつ、演劇の手法を用い、認知症の高齢者と多文化共生の道を考えるきっかけを提供していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
高齢者の見守りに係る住民調査に関して、上京区仁和学区で実施することができず、伏見区砂川学区では、住民600名の予備的な調査実施に止まった。これは、アンケート調査に従事する学生の準備状況が不十分であったためである。なお、27年度は調査にむけての体制を整えることができた。
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次年度使用額の使用計画 |
上京区仁和学区と伏見区砂川学区での高齢者の見守りに関する調査を行う。その調査と分析等の費用に充当する。
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