研究課題/領域番号 |
26380830
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研究機関 | 大阪千代田短期大学 |
研究代表者 |
松井 順子 大阪千代田短期大学, 総合コミュニケーション学科, 准教授 (20552772)
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研究分担者 |
牧里 毎治 関西学院大学, 人間福祉学部, 教授 (40113344)
青木 淳英 大阪千代田短期大学, 総合コミュニケーション学科, 教授 (50442281) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 配食サービス / 生活支援 / 地域特性 / 食の多面性 / 多様な主体参加 |
研究実績の概要 |
初年度は、1.代表的な配食事業の事例を集め研究会を定期的に開催し、事例検討を重ね、問題意識の共有に努めた。その結果、地域支援事業の要綱に記載されている「地域の実情に応じた事業」とはどの要因を指すのか、一般的に考えられる高齢世帯や供給体制の状況のほか、地域の食文化を組み込まなければ食生活支援は継続性が担保できないと仮説を立て、今後の調査フレームの設定が進んだ。2.NPO等の配食事業を支援する中間支援組織である全国老人給食協力会が開催する全国食事サービスセミナーに参加し、事業組織の状況把握に努めた。その結果、積極的な事業展開を図る非営利組織との交流ができ、今後の調査先の選定が進んだ。3.厚生労働省老健局振興課・地域包括ケア推進官と全国老人給食協力会専務理事を講師に招き、大阪府内の食事サービス連絡会会員も加わり、「介護予防・生活支援総合事業を視野に入れた今後の配食サービス事業について」をテーマに、セミナーを開催した。その結果、地域包括ケア構築に向け配食サービスは、見守りや互助、社会参加の促進等の点からも貢献できるのではないかと議論が交わされた。4.歴史のある大阪市社会福祉協議会の配食事業担当者を訪問し、聞き取り調査を行った。その結果、社協事業は終了で、生活支援を目的にした市の配食事業に一本化の方向であることが明らかになった。5.全国の配食事業の趨勢を把握するため、47都道府県庁所在市を対象に、各自治体の配食事業の現状と課題、今後の方針について、電話調査を実施した。6.5.の調査で得られたデータと家計調査年報データを併用して分析を行い、社会福祉学会第62回秋季大会で、「食料支出の類型と高齢者の食生活支援に関する考察」をテーマに報告を行った。要旨は、「地域の実情に応じた事業」と銘打たれているが、地域特性を意識した自治体は多いとはいえない実情が明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①事業課題を明らかにするための調査フレームの検討を重ねた。その結果、事前に予測していた福祉や経済・経営の視点のほか、食文化も組み込み必要性があると仮定した。その意図は生活支援の継続性の担保であり、今後、研究の幅が広がることが予測される。 ②サービスの質を担保することで、民間営利大手配食サービス事業者よりも優位な事業展開を進めている大都市のNPOを把握することができた。その詳細を調べれば、労働集約型の配食事業がかかえる課題の改善策を見いだせる可能性が高い。 ③47都道府県庁所在市の配食事業の状況を調査した結果、配達距離が長いことや,中山間地,島部へは補助を増額している事例の存在、都市規模や世帯特性のほか、生活文化の特性を事業に反映している事例を確認できた。さらに、配食普及型と類型できる自治体事業が一定数存在する。当然、これらの事例を調べる必要性は高く、調査先の選定が進んだ。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、研究会で仮定した研究フレームを基本にした調査の実施と、学会報告の開始である。先ず、昨年度実施した研究の基礎調査と位置付けられる都道府県庁所在市への配食事業に関する電話調査で得られたデータを、既存の統計データと併用して、事業の類型化を試みた研究結果を、第63回社会福祉学会秋大会で報告予定である。今年度はその類型を参照しながら、調査を進める。具体的には大規模需要が存在する大都市圏は、公的事業と市場化されたサービスの両者を調べ、それぞれの事業の意義と優位性、企業努力、課題と経営規模の違い等を明らかにする。調査予定は、東京都特別区内、名古屋市、仙台市である。特別区は同じ都内であっても、区ごとに事業の有り様が大きく異なることは26年度の事例検討で把握済みで、その詳細を調べる。名古屋市は配食事業を介護保険特別給付で実施し、委託先の事業所数が100社に及ぶ。公的事業でありながら、市場化されたサービスに近い形である。その特性に着目して、事業者への郵送調査を予定している。仙台市は、NPO等の非営利組織がサービスの質を担保することで、民間営利大手配食サービス事業者よりも優位な事業展開を進めている。配食事業は総じて高コストで経営課題が多いとされるなか、これらの組織の企業努力は多くの地域で参考になる点が多いと思われる。次に、事業に特徴のある地域、つまり、地域特性を反映している事例の調査は、配達距離の長さや中山間地、離島への配達コストを考慮して補助を増額している長崎市、配食は成長産業であると述べた松江市、介護予防生活支援総合事業で実施している静岡市、2人訪問で生活支援も組み込んでいる宮崎市、事業がきめ細やかな設定である鹿児島市などの訪問調査を予定し、課題と事業努力を明らかにしていく。特に、仙台市・長崎市・鹿児島市は、本研究で試みた類型分析で配食普及型に該当する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今後、大規模なアンケート調査を行う予定であるがその調査回答のうち、記述回答を分析する際、解析に要する時間を削減するため、質的データの解析ソフトを購入することとした。しかし、当初予算では購入費用が不足したため、次年度の費用を一部前倒し請求することで購入費用に充てた。
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次年度使用額の使用計画 |
研究は現在、東京都各自治体を対象に調査を実施てしている。さらに、今年度から来年度にかけて、社会福祉協議会を全国ブロックに分けて、都道府県単位で抽出した調査を行うことと、名古屋市の委託事業者100社を対象にした調査の実施を予定している。そのほか、全国の主な事業を訪問し聞き取り調査を重ねる予定である。それらの調査で得た質的データは、初年度に予算を前倒しをして購入した質的データ解析ソフトを活用して、研究を進める予定である。
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