平成28年度は、自治体、県の労働局、ハローワークなどへのヒアリング調査と資料の収集を、一時期、本研究とは別の外在的な理由で労働局・ハローワークへの調査が停滞したものの、実施した。生活が不安定な層の制度的枠組みを整理し、自治体のケースワーカー、就労支援員、ハローワークの職業相談員(就職支援ナビゲーター)へのヒアリング調査により運用面の実態を探った。 まず、生活保護受給者における自治体とハローワークとの一体的支援と生活困窮者自立支援との制度的重複による効率性の実態について、それぞれに確認を行った。一体的支援と要支援者の支援体制がスムーズに連続するように生活困窮者自立支援制度が施行したものの、事業としては継ぎ接ぎの懸念が確認された。一体的支援が自治体の直営なのに対して、就労準備支援は任意事業であり委託のシェアが9割に近い。自治体のケースワーカーを補助する就労支援員と、ハローワークの就職支援ナビゲーターによる支援(チーム支援)に、民間の就労準備支援員が組織間連携として加わった。福祉事務所が「稼働層」を抽出することに課題があるうえに、委託先とは個人情報の共有が難しいなど、ハローワークと中間的就労の直接連携に障害があることを確認した。 また、一般就労から離職し生活不安定者になると、雇用保険事業によりカバーされるが、失業保険の給付に時間がかかり(待機期間1週間、自己都合離職で給付制限期間が最大3か月など)利用頻度は低く、さらに求職者支援制度の導入などにより雇用保険は多様な状況に対応可能であるが、これらの早期再就職に対する効果は限定的である。生活保護受給者は最低限の生活が保障される一方、失業者は即生活困窮者に陥る可能性をもっており、早期の就職が難しい層では中間的就労と職業訓練の効果が見込まれているが、失業者のニーズには適っていないことが確認された。
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