平成29年度は①昨年度実施した医療依存度の高い要介護者を在宅で介護した経験のある家族介護者へのインタビュー調査のデータ分析を行い、学会で発表した。医療的ケアが伴う在宅介護を選択した背景には要介護者の医療依存度は高いものの病状が安定していること、家族介護者の主体的意思決定に基づいていることなどが確認された。また在宅介護継続においては医療的ケアの困難さよりも専門職の対応、特に情報提供において困難さを感じる場面が多いことも確認された。専門職から提供されるサポートは受け手である家族介護者の評価によって肯定的にも否定的にも評価されるため、本来、有益であるはずのサポートが支援効果の抑制につながる可能性も示唆された。そこで郵送調査では②専門職の対応、特にサポート受領に対する家族介護者の自己評価に焦点を当てて実施した。その結果、介護保険制度やケアプラン・提供サービスに関する説明、家族介護者へのねぎらいや健康状態の確認など情緒的サポートに関しては「十分対応してくれる」と評価されていたが、介護保険制度以外で活用可能な制度・サービス、新規事業所情報などについては評価が低かった。また今後、提供を希望する情報としては市町村独自サービスや経済面での保障・手当に関する情報、緊急時の対応に関する情報などが挙げられていた。専門職がソーシャルサポートの重要な提供源であることは自明であるが、情報的サポートにおいては、家族介護者との関係性も考慮した対応の必要性が示唆された。ただし今回はサンプル数が87ケースと少なかったため、サンプル数を拡大した詳細な分析が必要である。また計画されていた介護継続中である家族介護者(3名)へのインタビューも実施したが、対象者のうち2名が2回目のインタビュー終了後に死亡され調査中止となった。今後は研究計画を見直し、医療依存度の高い要介護者における在宅介護継続要因を追究していきたい。
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