研究課題/領域番号 |
26380837
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
大渕 憲一 東北大学, 文学研究科, 教授 (70116151)
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研究分担者 |
渥美 恵美 東北福祉大学, 健康科学部, 教授 (20326747)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 釈明受容 / 謝罪 / 正当化 / 修復機能 / 日本人 / 中国人 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、日本人の謝罪傾向の背後にある心理過程を同じ東アジア文化圏に属する中国人との比較を通して明らかにすることである。本年は加害者からの釈明が被害者に対して、どのような意味で被害回復をもたらすと知覚されるかが受容を規定すると仮定して、調査を行った。日本人成人男女160名、中国人成人男女176名を対象にインターネット上でシナリオ実験を実施した。参加者には、被害者が加害者から釈明(謝罪か正当化)を受けた3種類のシナリオを読ませ、被害者の立場で釈明に対して心理的、行動的にどのような反応を行うか示すよう求めた。その結果、日本人も中国人も正当化より謝罪を受けた人の方が、これを有意に受容し、また満足感も強かった。更に、参加者たちは、謝罪した加害者を、正当化を試みた加害者よりも協調性、誠実性、信頼感などの点で有意に好意的な人物と評定しており、この点も日中共通に見られた。本研究では、更に、釈明受容を促す心理的要因として、実利的回復(物質的被害の回復)、象徴的回復(傷つけられた自尊心の回復)、社会的回復(逸脱された社会規範の再構築)の3個の被害回復を仮定したが、日中両国において、謝罪を受けた人は正当化を受けた人よりも、これらすべての被害回復を有意に高く評定しており、物質的意味だけではなく、象徴的・社会的な被害回復が釈明受容を促すことを意味している。ただし、謝罪だけではなく、正当化に関しても、これらの被害回復が可能であると期待した人はその釈明を受け入れたことから、これらの被害回復は謝罪によってのみ可能なものではないことも示唆された。今回の分析結果では日中間に違いはほとんど見られず、釈明、特に謝罪の修復的機能が両文化において共通に働いていることが示されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
若干の予算不足で、一部、調査が未完了の部分がある。申請時は日本、中国、アメリカの3か国で調査を実施する計画だったが、物品費で購入した統計ソフトが申請時よりも価格が上がっていたことなどの理由で、調査費用に不足が生じた。日本と中国において調査を完了し、またアメリカでの調査に向けて調査票の作成と翻訳までは終えたが、この時点で、調査費用は11万円余しか残っていなかった。これではアメリカで調査を実施するには予算不足となることから、今年度は実施を見合わせた。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度からの繰り越す11万円余に、新年度予算から15万円ほどを充当して、アメリカでの調査をまず実施する。その後、平成27年度に予定されている謝罪効果の実験的検討を日本、中国、アメリカの3か国で実施する。編成27年度は消耗品などを節約し、これらの計画を完全実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請時は日本、中国、アメリカの3か国で調査を実施する計画だったが、物品費で購入した統計ソフトが申請時よりも価格が上がっていたことなどの理由で、調査費用に不足が生じた。日本と中国において調査を実施し、またアメリカでの調査に向けて調査票の作成と翻訳までは終えたが、この時点で、調査費用は11万円余しか残っていなかった。これではアメリカで調査を実施するには予算不足となることから、実施を見合わせ、未使用の11万円余を次年度に繰り越すこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
平成26年度からの繰り越す11万円余に、新年度予算から15万円ほどを充当して、アメリカでの調査をまず実施する。その後、平成27年度に予定されている謝罪効果の実験的検討を日本、中国、アメリカの3か国で実施する。消耗品などを節約し、これらの計画を完全実施する予定である。
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