研究課題/領域番号 |
26380837
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
大渕 憲一 東北大学, 文学研究科, 教授 (70116151)
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研究分担者 |
渥美 恵美 東北福祉大学, 健康科学部, 教授 (20326747)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 信頼 / 謝罪 / 能力 / 倫理 / 違反 / 不祥事 |
研究実績の概要 |
不祥事を起こした団体の代表者がTVカメラの前で頭を下げるという謝罪会見がよく見られる。日常生活においても人々の間で謝罪は頻繁に行われている。謝罪とは非違行為(失敗、違反、危害など)に対してその責任を認めることである。公的にも私的にも謝罪が多用される理由は、非違行為によって損なわれた信頼が謝罪によって回復されると一般に信じられているからである。しかし、非違のタイプによっては謝罪の効果はないとの指摘もある。本研究の目的はこれを実験的に確認することである。実験参加者(男子学生62名)に職場、学校、友人関係の場面である人物が不適切な行為をする様子を描いた6個のエピソードを3コマのイラストで提示し、その後行為者が謝罪(責任を認め、改善を誓う)か正当化(自分が間違っていないと主張)する様子を見せて、その人物に対する信頼度を評定させた。不適切行為が能力不足か(能力違反)、それとも倫理感不足によるものか(倫理違反)によって2バージョンが作られた。2種類の信頼測度(信頼意思、リスク受任意思)を使い、エピソードごとに違反(能力、倫理)x 釈明(謝罪、正当化)の2要因分散分析を行ったところ、合計12回の分析中6回において謝罪が正当化よりも行為者に対する信頼度を高めることが見いだされ、状況や測度によって変動はするが、従来の研究同様(大渕, 2010)、謝罪の信頼回復効果が確認された。しかし、二つの分析結果はこの効果を限定するものであった。一つの分析では(学校場面でのリスク受任意思)倫理違反において謝罪と正当化の信頼度に違いはなく、他の一つの分析では(職場間面での信頼意思)むしろ謝罪した行為者への信頼度が低かったのである。この結果について、専門家には特に高い倫理性が求められ、これに違反した場合の信頼損傷は大きく、謝罪によってもその回復は困難なのではないかと解釈した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は信頼回復という謝罪効果に関する実験的検討を、大学生を対象に実施する計画であったが、実験材料(イラスト作成、実験プログラム)の作成に思いの外時間がかかり、また、実験準備が整った後、二つの大学で実験実施のための倫理審査を申請したが、一方の大学で承認が下りるまでに時間を要したことなどから、実験開始が遅れたたが、結局はほぼ予定通り実験を遂行することができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度の実験結果を分析したところ、データの不足を感じるところがあったので、平成28年度は、補充実験を行いながら、これと並行して研究成果の発表を行い、全計画を完遂する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画された研究に必要な支出を終えたが、8647円の端数が残ったので、これを次年度に繰越すこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
8647円は次年度の物品費に追加して使用する。
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