研究課題/領域番号 |
26380839
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
相川 充 筑波大学, 人間系, 教授 (10159254)
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研究分担者 |
蔵永 瞳 就実短期大学, 幼児教育学科, 講師 (30634589)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 状態感謝 / 特性感謝 / 心理的負債 / 向社会的行動 |
研究実績の概要 |
1.特性感謝と状態感謝の関連を示す社会的認知モデル(Wood et al, 2008)の構成要素の一つである「状況要因」について検討した。感謝が生起する場面を被援助場面に限定した上で、「いつ」「どこで」「だれに」「どのような内容」の援助を受け、「どのような結果」になったかを調査対象者に自由記述させた。その記述内容を14カテゴリーに分類し、クラスター分析によって5つのクラスターに分けた。状況要因による各要素の差異を検討するために、クラスターを独立変数(1要因5水準)、「状態感謝」、「価値」、「コスト」、「誠実な援助」、「関係の継続」、「状況の好転」の得点をそれぞれ従属変数とする一要因分散分析を行った。その結果、状態感謝は、困難状況において情緒的支援を依頼できる親しい人から援助を受ける状況で強く経験され、全く逆の状況では弱く経験されることが明らかになった。また、状況要因によって「価値」と「コスト」の評価に影響が出ることも示唆された。 2.状態感謝と心理的負債は、被援助時に同時に生起するが、個別の概念であることを実証した。具体的には、特性感謝は、状態感謝とは有意な関係にあるが、心理的負債とは有意な関係ではないという予測を立てた。調査対象者に他者からの受益場面を思い出させ、その出来事について記述させたあと、受益場面の利益評価、状態感謝、心理的負債、特性感謝を測定して、相互の関連を統計学的に分析した。その結果、特性感謝と両概念との関係は、単相関では、それぞれ有意な正の関係を示していたが、「利益の評価」を統制すると特性感謝は状態感謝と有意な正の関係を示すが、心理的負債とは有意な関係を示さなかった。これにより、両概念が異なる概念であることを明らかにできた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
データ収集の段階において、実験室実験を構成するほどまでに、研究計画を絞り込むことができなかった。そのため、実験室実験が実施できなかった。 実験室実験の前段階として、調査研究を行った。調査研究においては、研究倫理の申請書類の作成に手間取ってしまった。 また、研究分担者が、研究初年度に異動したため、研究体制を整えることができず、当初の予定よりも研究全体が遅れてしまった。
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今後の研究の推進方策 |
調査研究を重ねたため、絞り込むべき要因が明らかになった。そこで今後は、当初の計画でもあった実験室実験を行う。 また、研究分担者の研究体制が整ったので、連絡を緊密にとって、組織的な研究を推進する。 さらに、一定の研究成果が出始めているので、海外での学会発表も含めて、積極的に学会発表を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
多額の経費を必要とする実験室実験を計画していたが、研究分担者の異動があったため研究体制を確立でなかったこと、また、実験室実験の目的を絞り込むことができなかったことから、実験室実験を見送った。 これに伴い、当初予定していた海外での学会発表を見合わせたために、旅費など経費を使わなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、実験室実験を実行するので、経費を必要とする。 また、研究体制が確立できたので、計画していた研究全体を推進することが可能になる。 さらに、研究成果の一部は、海外の学会において発表する予定なので、これに伴う経費を使う予定である。
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