研究実績の概要 |
1)農業・漁業・都市的地域から収集したデータを解析し、マルチレベル分析を行った。また、2)様々な企業組織からのデータを収集し、マルチレベル分析を行う準備を行った。 農業・漁業・都市的地域については、まず、先行研究(Uskul et al., 2008; Talhelm et al.,2014同様、日本においても相互協調性は農業者でそれ以外の職種の人よりも高いという結果が得られた。さらに興味深いことに、マルチレベル分析の結果、相互協調性は農業地域の住人で漁業地域の住人よりも高いという、集落レベルでの効果が得られた。つまり、農業地域に住んでいれば、農業従事者でなくとも、相互協調性が高くなると結果である。また、集落レベルでの相互協調性が農業者率によって予測される効果は、集合活動(清掃活動や集落の寄り合いなど)の参加率の高さによって媒介されていた。つまり農業者が多い地域では集合活動が盛んになり、そのことにより相互協調性が高くなるということができる。この点については時系列分析によってもサポートされた。 企業データについては、日本の様々な企業・組織において、会社への愛着や職場の人への信頼感が社員の幸福感に影響を与えることが明らかになった。つまり、会社への愛着が職場の人への信頼感が高い人の方が全体的に幸福感が高いだけではなく、会社の愛着や職場への人への信頼感の平均値が高い会社ほど、そうではない会社よりも従業員の平均幸福感が高かった。一方で、企業による違いがあるものもあった。従業員の自立性は社内のソーシャル・キャピタルがないときにはかえってうまく機能しないという結果が得られた。 これらの結果から、日本国内の文化の多層性(生業や企業風土による違い)と共通性の双方を検証することができ、学会発表、論文執筆、一般向け講演会を通じて成果発表を行った。
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