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2015 年度 実施状況報告書

文化的価値の伝達:個人の選好および文化化による影響

研究課題

研究課題/領域番号 26380843
研究機関神戸大学

研究代表者

石井 敬子  神戸大学, 人文学研究科, 准教授 (10344532)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワード文化 / 価値 / 選好 / 伝達
研究実績の概要

当該の文化において歴史的に培われてきた意味体系や信念、価値、社会規範は、それらが内包された慣習の日常的な実践や文化的産物への接触を通じ、人々に対してそれらに応じた心の性質を招来する。そして個々人は、その意味体系や信念、価値、社会規範を再生産していく。本研究はそれらのプロセスが繰り返される結果として、文化的産物に内包されている価値がどのように維持・変容されるのかを検討する。本年度は、文化的価値に関してニュートラルな塗り絵を出発点として、それを人から人へ再生していったとき、最終的にどのような特徴をもった塗り絵になるのかを調べる実験を日本(神戸大学)およびアメリカ(ウィスコンシン大学)で行った。具体的には、最初の参加者に数秒間ニュートラルな塗り絵を提示し、妨害課題後にその塗り絵を再生してもらい、そこで再生された塗り絵を次の参加者に見せ同様の手順で再生してもらうというのを3人1組で行った。これに加えて、アジア系カナダ人を対象に、元々のアジア文化への同化度および現在のカナダ文化への同化度の程度が文化的産物の産出に影響を与える可能性についても、トロント大学でデータ収集を行った。そしてここで収集した塗り絵に対して、神戸大学の日本人学生が好み、独自性、協調性の観点から評定した。先行研究では、アジア文化への同化度が高いアジア系カナダ人ほど日本人の塗り絵を好み、一方カナダ文化への同化度が高いアジア系カナダ人ほどアメリカ人の塗り絵を好む傾向が見られたが、塗り絵の産出に関しては文化化の影響があまり見られなかった。ただしカナダに居住している期間による影響が多少見られたため、今後この点を考慮して再検討していく必要がある。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

昨年度、塗り絵の伝達に関してアメリカにおけるデータ収集ができず、その分遅れが生じたが、今年度はそれをカバーし、日米比較を行うことができた。また予定通り、文化化と文化的産物の産出に関してアジア系カナダ人を対象としたデータを収集することができた。しかしながら文化化に関するマレーシアでのデータ収集まで至らなかったため、2016年度中にそれを迅速に進めたい。そのような点はあるものの、概ね計画通り進んでいると言える。

今後の研究の推進方策

2016年度中に、マレーシアにおいて欧米文化による影響をうけて育ってきている中国人を対象に、文化プライミングが文化的産物への好みに影響を与えるのかを検討する実験を行う。それと同時並行に、2015年度に得られたアジア系カナダ人の文化化と文化的産物の産出のパターンを踏まえ、文化化と文化的産物の変容というところまで実験デザインを拡張できるか早急に検討し、データ収集に努める。そして得られた知見に関しては順次学会発表し、論文としてまとめていく。

次年度使用額が生じた理由

マレーシアで実施予定であった文化プライミングと文化的産物の好みに関する研究が実施できなかったため。

次年度使用額の使用計画

マレーシアで実施予定のその研究を実施することでこの次年度使用額を消化する。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2016 2015 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件) 図書 (2件) 備考 (1件)

  • [国際共同研究] ウィスコンシン大学心理学部(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      ウィスコンシン大学心理学部
  • [国際共同研究] トロント大学心理学部(カナダ)

    • 国名
      カナダ
    • 外国機関名
      トロント大学心理学部
  • [雑誌論文] Gene-culture interaction: Influence of culture and oxytocin receptor gene (OXTR) polymorphism on loneliness.2016

    • 著者名/発表者名
      LeClair, J., Sasaki, J. Y., Ishii, K., Shinada, M., & Kim. H. S.
    • 雑誌名

      Culture and Brain.

      巻: 4 ページ: 印刷中

    • DOI

      10.1007/s40167-016-0034-7

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Japanese youth marginalization decreases interdependent orientation.2016

    • 著者名/発表者名
      Ishii, K., & Uchida, Y.
    • 雑誌名

      Journal of Cross-Cultural Psychology

      巻: 47 ページ: 376-384

    • DOI

      10.1177/0022022115621969

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Psychological adaptation to the Great Hanshin-Awazi Earthquake of 1995: 16 years later victims still report lower levels of subjective well-being.2015

    • 著者名/発表者名
      Oishi, S., Kimura, R., Hayashi, H., Tatsuki, S., Tamura, K., Ishii, K., & Tucker, J.
    • 雑誌名

      Journal of Research in Personality

      巻: 55 ページ: 84-90

    • DOI

      10.1016/j.jrp.2015.02.001

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] Japanese youth marginalization decreases interdependent orientation.2016

    • 著者名/発表者名
      Ishii, K., & Uchida, Y.
    • 学会等名
      The 31st International Congress of Psychology
    • 発表場所
      PACIFICO Yokohama(神奈川県・横浜市)
    • 年月日
      2016-07-24 – 2016-07-29
    • 国際学会
  • [学会発表] 自己評価と友人からの評価の一致度から受ける印象:日英比較研究.2015

    • 著者名/発表者名
      越智美早・今田俊恵・石井敬子
    • 学会等名
      日本社会心理学会第56回大会
    • 発表場所
      東京女子大学(東京都・杉並区)
    • 年月日
      2015-10-31
  • [学会発表] 文化的産物を通じた価値の維持と個人の選好:塗り絵を用いた比較文化研究.2015

    • 著者名/発表者名
      石井敬子
    • 学会等名
      日本赤ちゃん学会第15回学術集会・ラウンドテーブル “おえかき”から探る心の起源
    • 発表場所
      かがわ国際会議場(香川県・高松市)
    • 年月日
      2015-06-27
  • [図書] Measuring and Understanding Emotions in East Asia. In H. Meiselman (Ed.), Emotion Measurement.2016

    • 著者名/発表者名
      Ishii, K., & Eisen, C.
    • 総ページ数
      印刷中
    • 出版者
      Woodhead Publishing.
  • [図書] コミュニケーション. 北村英哉・内田由紀子(編)社会心理学概論.2016

    • 著者名/発表者名
      石井敬子・菅さやか
    • 総ページ数
      印刷中
    • 出版者
      ナカニシヤ出版.
  • [備考] 神戸大学大学院人文学研究科・文化心理学研究室

    • URL

      https://sites.google.com/site/kobecpl/home

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公開日: 2017-01-06   更新日: 2022-01-24  

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