研究課題
当該の文化において歴史的に培われてきた意味体系や信念、価値、社会規範は、それらが内包された慣習の日常的な実践や文化的産物への接触を通じ、人々に対してそれらに応じた心の性質を招来する。そして個々人は、その意味体系や信念、価値、社会規範を再生産していく。本研究はそれらのプロセスが繰り返される結果として、文化的産物に内包されている価値がどのように維持・変容されるのかを検討する。そして、1) 人から人へ文化的産物が再生されていく過程において、当該の文化において優勢な価値が意識されることなく付与されていく結果、最終的な産物は当該の文化において優勢な価値を帯びた性質を伴うこと、2) 当該の文化において優勢な価値とそれへの選好とが関連している故、文化的産物に対する人々の好ましさがその変容に影響も与えること、3) 文化化による影響は、文化的産物の産出にも見られ、自動的であることを検討する。特に、文化化のレベルはこれまで文化的慣習への参加等に基づく参加者の自己報告をもとにしてきたが、果たしてそのような文化化の影響は状況的な手がかりを操作しただけでも生じるのだろうか。本年度はこの点についてマレーシアにおいてデータ収集を行い検討したが、そのような手がかりによる効果は見られなかった。そのため本年度は、新たな成果を挙げるべく、文化的な価値と関連している選好に着目し、それがどの程度人々の動機づけに影響を与える結果、間接的に社会規範の再生産につながる可能性について日本・ドイツとの間で検討した。相互協調に価値を置く日本では他者の選好が動機づけを促進させたのに対し、ドイツではそのような傾向が見られなかった。さらにこの文化差には他者からの排除を回避しようと動機づけがかかわっており、このことは、排除回避の動機づけが社会規範の再生産に関与している可能性を示唆した。
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