研究課題/領域番号 |
26380845
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
相馬 敏彦 広島大学, 社会(科)学研究科, 准教授 (60412467)
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研究分担者 |
前田 和寛 比治山大学短期大学部, 総合生活デザイン学科, 講師 (30462055)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 社会的動機 / 接近 / 回避 / 社会的環境 |
研究実績の概要 |
本年度は、主に3つの研究を行い、社会的接近・回避動機と制御資源の関連について以下の示唆を得た。 第一に、大学生81名を対象とする実験室実験の結果、攻撃的な人が挑発的な振る舞いを受けたとしても、事前の集団作業がポジティブ感情を喚起するものであったならば、攻撃的な行動を抑制することを示した。これは、集団での作業経験が自己制御を枯渇させるだけでなく、場合によっては逆に資源回復にも資することを示唆している。 第二に、会社員1002名対象とするインターネット調査の結果、外部環境が変化し自らの組織変革の必要性を認識する場合、回避動機の強い個人であっても、業績が個人ではなく集団単位で評価される場合には、組織を革新する行動をとろうとすることである。これは、制御資源の負荷を低減するような組織システムの存在によって、回避動機者に本来は難しい制御行動でも促すことが可能であることを示す。 第三に、大学生33名を対象とする記憶実験の結果、単語記憶課題におけるパソコンモニターの背景色が赤の場合、青や黒の場合に比べて回避動機を表す単語の再生成績が高く、またその後の社会的場面においてより困難な目標を想起しやすいことが示された。これは、社会的回避動機の状況的な誘導可能性を示すと同時に、自己制御プロセスにおける目標設定に社会的動機が影響する可能性を示唆する。 これらの結果は、いずれも本研究で想定するように回避動機の充足に社会的環境変数が関与すること、ならびにそのプロセスについて示唆を与えるものであり、次年度以降の検証の土台となる知見である。なお、得られた成果については、関連する学会で既に一部発表しており、残りについても今後発表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
組織・集団場面での検証については、予定よりも前倒しで検討が進んでいるが、親密な関係での検証については準備に時間を要した結果、やや遅れている。総じて、おおむね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
特に親密な関係での検証については近年の関連研究の手法の展開を踏まえて、次年度に速やかに取り組みたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
親密な対人関係に関する実証研究の準備に時間を要し、実施に入れなかったためそのための費用を次年度用に繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
調査研究の費用として用いる予定である。
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