研究課題/領域番号 |
26380845
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
相馬 敏彦 広島大学, 社会科学研究科, 准教授 (60412467)
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研究分担者 |
前田 和寛 比治山大学短期大学部, 総合生活デザイン学科, 講師 (30462055)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 対人相互作用 / 社会的動機 |
研究実績の概要 |
本年度は、二つの研究により回避動機の充足プロセスを理解するための有益な示唆を得た。 第一に、親密な関係の当事者を対象とするパネル調査の結果、交際相手からの心理的暴力被害経験が、どのような条件下で後の相互作用における回避動機に影響するのかを明らかにした。調査初期時点で回避動機に基づき行動していなかった場合、暴力被害を経験するほど約半年後の回避動機が高まっていた。一方、回避動機行動をとっていたにもかかわらず被害を経験していた場合、後の回避動機は高まらなかった。また後者の条件では後の接近動機が低まることが示された。接近動機行動について同様の結果が示されることはなかった。これらの結果は、回避的に行動してもそれが充足されない場合、さらに回避動機を高めるのではなく、むしろ親密な関係にとって基盤である接近動機を低め対応することを示している。社会的回避動機の充足プロセスが関係の継続性そのものに影響する可能性を強く示すものである。 第二に、集団での相互作用課題を題材とする実験の結果、事前の相互作用に対する回避動機の強さがそれを反映した行動を促す条件が明らかとなった。その条件とは、他のメンバーから公正に扱われたかどうかであり、課題場面で回避的な動機を充足させようとする行動が自発・継続するためには、対人的に公正に扱われる必要のあることが示された。組織的公正の知覚が自己制御を可能にするという知見を踏まえ、この知見を捉えれば、回避動機の充足プロセスに自己制御が必要となることが示唆された。 いずれも結果も、社会的回避動機の充足に社会的環境変数が関与することを示す知見であり、今後関連学会で発表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度までの課題を踏まえて、情緒的な関係領域と課題的な関係領域のいずれにおいても回避動機充足プロセスの特異性を明らかにすると共に、その調整要因を実証的に明らかにすることができた。全般におおむね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
既に、多様なデータを得ており、これらの知見を統合的に整理する必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度予定していたパネル調査について、内容的に次年度の実施が適切であると判断したため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
引き続きパネル調査を部分的に実施すると同時に、得られた成果を国際学会で発表する。
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