研究実績の概要 |
本年度は3つの研究を行った。研究1は、幼児と小学2年生を対象としたインタビュー調査である。Happy Victimizerが生じる理由を探るために、道徳逸脱場面および道徳とは無関係のルール逸脱場面における感情帰属を検討した。その結果、ルール逸脱場面においてポジティブ感情を帰属した子どもは道徳逸脱場面でポジティブ感情を帰属する(HV反応)が、ルール逸脱場面でネガティブ感情を帰属した子どもは必ずしも道徳逸脱場面でネガティブ感情を帰属しなかった。このように、HV反応は、ルール逸脱とネガティブ感情の関係の理解以外の要素も含まれることが示唆された。そこで研究2では、幼児と小学2年生に対し、道徳逸脱の通常場面、ルール強調場面、被害者強調場面を提示した。その結果、ルール強調場面と被害者強調場面においてHV反応が減少した。HVが生じる原因は複合的な理由によるものと考えられるが、その一部を明らかにした。研究3は、小4、小6、中2、高1、大学生を対象に、慣習的逸脱場面と道徳的逸脱場面を提示し、自分ならどうするか(道徳判断)、その時の感情(感情帰属)、そのような感情になる理由(理由づけ)を求めた。同時に、QOLまたは生活満足度を調査した。道徳判断と感情帰属の組み合わせで、HV,UHV,HM,UHMの4パターンに分類したところ、先行研究と異なり、青年、大人であってもHM(Happy Moralist)は少なかった。詳細な分析は終了していないが、少ないながらもHMの者は生活満足度が高いことが示唆された。
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